授業の目的と質問の大切さを子どもたちに気付かせる、授業の達人
授業は、消防署に出動要請が来て約1分間で出動する様子や、訓練の様子が取材されたテレビ番組を視聴することから始まりました。
これは子どもたちの興味・関心を高めるのに、有効な手法です。視聴の後、AR先生は「見て思ったことは?」と、当たり前で素直な問いかけをしました。ひねった質問ではなく、全員が授業に参加しやすい問いです。子どもたちが挙げた声の中から、一番印象に残った「速さ」にこだわり、授業が進みます。先生は、子どもたちの発言をおうむ返ししながら、さまざまな意見を引き出しました。
そのあと、出動してから火災現場までは約3分間かかることを伝え、黒板に「約4分間で火災現場に着く」「速さの工夫は?」と、ポイントを書きました。そして、「教科書や資料集で調べよう」ではなく、「こんなに早く着ける理由を考えよう。先ほどの番組から気付いたことは?」と問いかけます。
「整理整頓され、必要な物のみ置いてある」「車が前向きで、出やすいようにシャッターが開いている」 などの声が出たうえで、消防士に聞かないとわからない、自分なりのこだわりを持った「質問作り」に入ったのです。
先生自身が消防署員の役になり、核心をつかむ質問へと練り上げていきました。子どもたちに「質問で大事なことは?」と尋ねたところ、「学校で何を勉強して、何がわかっているのかを伝えたうえで、何が知りたいかを伝えること」という答えが返ってきました。
「先生次第で、小学3年生もここまで言えるようになるのか」と思った、印象的な授業でした。