計算の前に頭の中でイメージ、子どもを夢中にさせる達人の算数の授業
NHK Eテレの教育番組を担当する、NHK制作局チーフ・プロデューサーの桑山裕明氏。学校を訪ね歩く中で、「こんな先生に教えてほしい」と思う授業に出会うことがあるという。今回は、筋道を立てて考える力を育てる算数の授業の達人、熊本県のAP先生。ベネッセ教育情報サイトでは、「直線で結ぼう」と題する小学校6年生の算数の授業を、桑山氏に紹介してもらった。
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AP先生の授業で子どもたちが目指すのは、わかったことを言葉にすること。これを「言葉の式」と呼びます。先生は、「言葉にして、筋道を立てて考える力を育てる」ことを目標にしているのです。
今回は、「9つの点と点を結ぶ直線の数は何本引けるか」を考え、数式を導く授業です。
まずは、点が1つの時は、直線は何本引ける? 0本ですでは、 点が2つの時は、直線は何本引ける? 1本です。そして、点が3つの時は? 4つの時は? ……。先生は、実際に線を引かずに、子どもたちにまず頭の中でイメージさせます。狙いは、子どもたちの「線を引きたい!」という意欲を高めること。
頃合いを見て、実際に図を書かせるようにすると、子どもたちはさまざまな方法で線を引き始めます。しかし、点が多くなると線の数が増えて、うまく数えられなくなります。先生は、表を使いながら、数えられる点と直線の数の関係から法則性、つまり「言葉の式」を見つけることにしました。
点が「+1」ずつ増えるのに対して、直線は+1、+2、+3となる法則を見つけた子、「点の数+直線の数=次の直線の数」というきまりを考える子……。子どもたちは、みんな謎解きに夢中です。そんな中、「点の数×1つの点で結べる直線を2で割る」という言葉の式が出されました。
AP先生の授業のモットーは、子どもたちから「今日の問題は難しかったけど楽しかった」「今まで嫌いだった算数が少し好きになりました」と言われること。まさにそのとおりの授業でした。
出典:謎解きから、筋道を立てて考える力を養う算数の授業 -ベネッセ教育情報サイト