「教育の情報化」 自治体格差がブレーキに!

電子黒板は前年度より8,000台余り増えて9万の大台に乗り、タブレット型コンピューターに至っては2倍以上の15万台超……。文部科学省が毎年まとめている公立学校の「教育の情報化」実態調査の最新結果(2014<平成26>年度)を見ると、情報機器の整備は力強く進んでいるようにも思えます。
しかし、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は6.4人と、前年度に比べ0.1人減っただけで、実質1人1台環境となる3.6人/台の整備目標(2017<平成29>年度まで、外部のPDFにリンク)には程遠いのが現状です。そうしたなかで懸念されるのが、自治体による格差です。

都道府県別の整備状況では、もともとトップだった佐賀県が、前年度の1台当たり4.3人から2.6人へと、飛躍的に向上しました。これは、県立高校の新入生から1人1台、タブレット端末を持たせることにしたのが影響しており、高校に限れば1台当たり3.2人から1.4人となっています。
しかし、最低の愛知県は8.4人、埼玉県も8.3人など、改善が進まない県も依然としてあります。これは、情報機器の整備費用が地方交付税で措置されていることが大きな要因です。補助金と違って使い道が限定されていないため、各自治体が独自に予算を組まなければならず、財政のやり繰りに悩む地方では、ほかの予算に使われてしまうことが少なくないからです。飛躍的に向上した佐賀県の高校にしても、生徒の個人負担という形で導入したものです。

一方で、情報教育の重要性と、情報機器の整備の必要性は、ますます高まっています。次期の学習指導要領(小学校は2020<平成32>年度、中学校は21<同33>年度、高校は22<同34>年度新入生から実施予定)の基本方針を示した「論点整理」でも、急速に進む情報化社会への対応はもとより、決まった問題を解けるだけでなく、「膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくこと」が重要だとしています。改訂の目玉とされるアクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)にしても、タブレット端末のようなICT機器があれば、学習がより進めやすくなるといいます。授業で使いたい時にいつでも使えるようにするためには、実質1人1台の環境が不可欠なのです。

もっと現実的なのが、高大接続改革の一環として進められている、大学入学者選抜の改革(外部のPDFにリンク)です。大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」では、次期指導要領の下で行われる2024(平成36)年度から、コンピューター使用型テスト(CBT)を実施したい考えです。教科「情報」も出題対象に想定しています。まだ先の話とはいえ、機器の操作に慣れるため、高校でも機器の整備が求められることでしょう。

いずれにしても、これからはICT機器を使いこなして勉強や仕事をすることが、ますます当たり前になっていくのは必至です。そうした時代に対応するためにも、各自治体には、先を見通した先行投資として、機器の整備に取り組むよう求めたいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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