所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て グローバル社会を生きる(1)グローバル人材って、どんな人?

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。



最近、新聞やテレビなどで「グローバル人材」という言葉をよく目にしませんか。グローバル人材育成をうたって学生・生徒募集している学校などもよく見るようになりました。ほかにはいったいどのような動きがあるのでしょうか。まずは国内から見てみましょう。

文部科学省は、「グローバル人材育成推進事業」を進めていますが、その事業について「若い世代の『内向き志向』を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図る(後略)」(文部科学省「グローバル人材育成推進事業」)と説明しています。具体的には、大学段階では、世界レベルの教育・研究や、日本社会の国際化をけん引する役割を担う大学を採択した「スーパーグローバル大学」、海外の優秀な留学生を日本の大学に集めることを目標とした「留学生30万人計画」、その留学生の受入先となる13大学を採択した「グローバル30」、高校でも「スーパーグローバルハイスクール」など、「グローバル」という言葉が、これでもかというほど並びます。小学校でも、数年前から英語が必修化され、さらに今後については教科化や小学3年生からの必修化も検討されているようですね。

それでは海外ではどうでしょうか。近年、大きな経済成長を遂げているアジア各国を見てみると、日本以上にグローバル人材育成は過熱しているようです。中国出身の友人の話では、中国ではここ数年、各地でインターナショナルスクールが急増しているとのこと。これは、従来から子どもをインターナショナルスクールに通わせていた富裕層のみならず、新中間層の家庭からの入学が増えていることが背景にあるようです。韓国やインドネシア、タイなど、ほかのアジアの国々も同様です。インターナショナルスクールに通う子どもは、最終的には欧米を中心とした海外の大学への進学を目指します。日本は国主導のグローバル化対応の動きが目立っているのに対し、アジア各国は個々の家庭での熱心な取り組みが目立ちます。

ところで、日本で「グローバル人材」といわれているのは、いわゆる「グローバルエリート」のことではないかと感じます。誰もがそのような教育を受けられる環境になるというのは素晴らしいことだと思います。しかし、反面、「うちの子には関係ない話だわ」と感じる保護者のかたも多いのではないでしょうか。仕事などで海外に出かけたり、海外に移り住んだりする日本人の数は増加傾向であるとはいえ、大多数は日本の中で仕事をして暮らしていくのが現実です。

しかし、たとえ日本にいても、グローバル化は私たちに決して無縁ではありません。在留外国人はこの20年間で約1.6倍に増えていますし、私たちの身近な生活の中でも、世界各地の動きが影響していることを実感する機会が増えてきたように感じませんか。海外に出ていくグローバル化だけではなく、国内のグローバル化も進んでおり、それは私たち自身の課題なのです。

それでは、グローバルエリートではなく、すべての人に必要なグローバル社会への備えの教育にはどのようなものがあるのでしょうか。その一つとして「ユネスコスクール」をご紹介します。ユネスコは「持続可能な開発のための教育(ESD)」を世界的に進めており、181か国で約10,000 校がESDに基づいた教育活動をする学校として認定されています。日本でも幼稚園から大学まで合わせて939校(2015<平成27>年6月現在)が認定され、「ユネスコスクール」として活動しています。ユネスコスクールでは、自分たちの住む地域の身近な課題(環境問題や異文化理解など)に取り組みつつ、そのグローバルなネットワークを活用して、世界中の学校と交流し、地球規模の諸問題に若者が対処できるような教育を目指しています。すべての子どもに対して、日本にいながらも世界的な視野で課題を解決しようとする資質・能力を育てようとしているのです。グローバルリーダーの育成だけではなく、ユネスコスクールのような活動が広がっていくことが、今後ますます重要であると感じます。


プロフィール

沓澤 糸

大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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