所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て 学校とのかかわり方(1)~PTA日英比較

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。

新年度、保護者にとって気になることの一つがPTAなのではないでしょうか。PTAというと、年度初めの委員決めや、平日の行事・会議など、ちょっと気が重くなるというかたもいらっしゃると思いますが、共働きや一人親の家庭の増加などに伴い、日本のPTA活動も過渡期に来ているように感じます。現代の状況に合ったPTA活動を考える参考に、イギリス、特にロンドンを中心とした地域について見てみましょう。

そもそも、イギリスにはPTAはあるのでしょうか? 実はあるのです。日本と同じく「PTA」という名前で保護者・学校が一緒に活動する組織が、ほとんどの学校にあるようです。ただし、PTAとは呼ばずに「PTO(Parent Teacher Organization)」だったり「The Friend of ●●●(学校名)」だったり、呼び名はもう少しバリエーションがあるようです。

PTAは、一般的には役員会(会長・副会長・会計・書記)とclass repsと呼ばれるクラス委員、そして一般会員で構成されます。クラス委員は、PTAの活動をクラスのほかの保護者に伝えるほか、PTA主催の各行事グループに分かれて活動します。このあたり、日本と同じですね。

ただし、その選出の状況はだいぶ違っていて、役員・委員は立候補ですぐに決まるそうです。日本の場合はクラス委員が決まらないと、半強制的に誰かを……という流れになりますが、イギリスではそういうことはないようです。もちろん、保護者全員が積極的にPTAの役員・委員を引き受けているわけではないようです。やりたい人・やれる人がやる、できない人に無理強いしないというのが原則のようです。ただし、詳しくはあとに書きますが、役員・委員を引き受けなくてもPTA活動に参加しやすい仕組みや、場が用意されているようで、多くの保護者がなんらかの形でPTA活動に参加しているようです。

では、イギリスのPTAはどのような活動をしているのでしょうか。その最大の目的はfundraising、つまり基金集めです。日本のように年度初めに会費を納めるというところも少ないようで、基本的には活動自体はできる人がボランティア活動でお金を集め、それを学校や学校外に寄付しているようです。

具体的には、クリスマスフェア、クイズ大会や花火大会、ディスコパーティー、国際交流イベントなど、保護者と子ども、学校の先生のみならず、地域の方々も参加して一緒に楽しめるさまざまなイベントを、PTAが企画・運営します。この会費(だいたい日本円で200円程度、高くても1000円くらいまでが多いそうです)と、イベントの中での模擬店の売り上げが基金に回ります。役員・委員以外の会員も、時間が合えば企画会議に参加自由、当日の運営なども都合のよい時間にお手伝いに入ったり、模擬店用のケーキを焼いてきたりするなど、さまざまな形で多くの保護者が楽しんで協力・参加できるようになっています。

イベントに参加・寄付ができない家庭でも、PTA活動に参加できる方法が用意されています。たとえば、PTAが学校に設置しているリサイクルボックスに、古布、古い靴、古本など寄付したり、指定された業者から制服を買うと、その売り上げの一部が学校に還付される仕組みになっていたり。多様な方法で、学校の基金集めに貢献できるのです。

こうして集められた基金は、校長先生と役員会が話し合い、たとえばコンピューターや校庭の遊具などの学校備品、ミニバス(スクールバス)の運営費、施設の修繕費、学校行事などに使われます。つまり、PTA活動のすべてが、学校や子どもたちのためになるというわけです。しかも、親子で楽しく参加できる活動が多く、これなら参加しやすいですね。

私自身が日本のPTA活動に参加しづらいと感じたのは、子どものためになるのかわかりにくい活動がある点でした。忙しいPTA活動を、子どもや、子どもたちが通う学校のためになる活動に絞れば、PTAの目的も果たされるように思います。

もちろん、日本とイギリスでは、文化や歴史、保護者を取り巻く社会状況なども異なり、一概には比較できないとは思います。特にチャリティー精神が根付いているイギリスのようなボランティア参加は、日本ではなかなか望めない部分もあるかもしれません。また、PTAをいきなり大きく変えるというのも難しいでしょう。しかし、ここで紹介したような保護者と子どもが一緒に参加し楽しめるイベントなど、「やり方」を少し取り入れるだけでもPTA活動のイメージが変わり、活動に参加するハードルが低くなるのではないかとも思います。


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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