「アクティブ・ラーニング」に学校現場は早くも過熱気味!?

中央教育審議会の部会で改訂の基本方針(論点整理)が決まった次期の学習指導要領で、目玉とされているのが「アクティブ・ラーニング」(AL)です。昨年11月に下村博文・文部科学相が中教審に諮問して以来、学校の先生の間でも日に日に関心が高まっています。それ自体はけっこうなのですが、逆に関係者の間には、過熱気味な関心の高まりを心配する声も広がっています。

「アクティブ・ラーニング」に学校現場は早くも過熱気味!?


諮問文では、「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」のことを「いわゆる『アクティブ・ラーニング』」と呼び、その具体的なあり方を検討するよう求めていました。新聞報道などでも、小学校英語の教科化や高校の新科目と並んで大きく取り上げられたため、学校現場の注目も集めました。
しかし、論点整理では「指導法を一定の型にはめ」たり「授業の方法や技術の改善に終始」したりするのではないかとか、「何のためかという目的を見失い、特定の学習や指導の『型』に過度に拘泥することもあるのではないか」といった懸念も指摘されています。

実際、部会審議の過程では、委員から「ALの趣旨をメッセージとして正しく学校現場に伝えていく必要がある」という発言が、たびたび聞かれました。文科省関係者や識者からも「ALについて、何でもよいから事例を教えてくれと言われて困っている」という嘆きが、よく聞かれます。何が問題なのでしょうか?

ALとは何かは、当コーナーでも諮問時の記事で紹介しました。改めて、論点整理を見てみましょう。そこでは、次期指導要領が目指す学習・指導方法の姿を「学び全体を改善し、子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定すること」だと位置付け、学習を通じて「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」をもたらすことが重要だとしています。こうした目的を実現するための「手段」がALなのであって、ALを導入することが「目的」ではないと戒めているわけです。

しかもALは、決して何かまったく新しいことを導入しようとするものでも、一つの教育方法を押し付けるものでもありません。現行の指導要領や全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)でも重視されている「活用」力の育成や、「言語活動」重視の流れの上にあるといいます。ある中教審委員は、「既に小・中学校の授業は十分アクティブ。あえて諮問でALという言葉を使ったのは、取り組みが遅れている高校へのインパクトを考えてのことだろう」「授業中の行動をアクティブにすればよいのではなく、子ども一人ひとりの頭の中がアクティブになることが重要だ」と解説しています。

今回の改訂の最大の眼目は「何を知っているか」にとどまらず、「何ができるようになるのか」を重視するという、知識の量から「資質・能力」(コンピテンシー)へのシフトです。ALは決して万能ではありません。ALでいったい何の力を伸ばそうとするのかを明確にし、そのための効果的な授業展開を各学校や先生方に工夫してもらうことが、最も重要なのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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