「スマホ脳」で集中力が行方不明! 子どもにスマホ利用のマルチタスクをすすめない3つの理由
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「子どもが宿題しながらYouTubeも見ている。そのほうがはかどるって」
「最近の子はデジタルネイティブだから、マルチタスクが得意?」
子どもたちが当たり前にスマホやiPadを使いこなす現在、こんな会話を聞くことも増えました。でも、子どもたちは本当に“ながら勉強”を器用にこなせるのでしょうか?
『スマホ脳』(新潮新書)の著者、精神科医アンデシュ・ハンセン氏は急速にすすむスマホ依存に警鐘を鳴らしています。成長過程にある子どもは特に注意が必要。40万部突破のベストセラー『スマホ脳』より、その理由を紹介します。
理由1:人間の脳は、スマホに合わせて進化していない
人類誕生から20万年。現在のように便利な生活を営んでいるのは、人間の歴史のごくわずか。99.9%の期間は天候に左右され、外敵におびえる暮らしでした。人間の脳は1万年変化しておらず、今も狩猟・採集生活に最適化されていると『スマホ脳』では解説しています。
茶色のクマが雪景色で目立たぬようシロクマになるまで、1~10万年。人々は毎日数時間スマホやデジタル画面を見つめて過ごすようになりましたが、スマホやSNSが登場したのはたった20年ほど前。進化には足りない時間です。
幼い頃からデジタル機器に囲まれて育ち、「デジタルネイティブ」と呼ばれる現代の子どもの脳も、スマホ生活に最適化されていません。集中力を失わずマルチタスクをこなすことはむずかしいとわかります。
理由2:スマホはドーパミンを放出させ、集中力を奪う
では、人間の脳がスマホに適応していないことで、どのような問題があるのでしょう。
やる気の源といわれる脳内の伝達物質、「ドーパミン」。実はドーパミンの役割は、「何に集中すべきか」を選択させること。お腹が空いているとき目の前においしそうなドーナツが出てきたら、私たちは「食べたい」と思い、意識がドーナツに集中しますよね。このとき、脳内ではドーパミンの量が増えています。
集中するときに役立つドーパミンは、
・新しいもの
・うまくいく“かも”(期待)
に対して放出されやすい傾向があります。
そして、スマホは「新しいもの(次々に生み出されるニュースや動画)」「うまくいく“かも”(自分の投稿に「いいね」がついているかも?)」が得意。ドーパミンが放出され、自分の意思だけでコントロールすることはむずかしいアイテムなのです。大人ももちろんですが、子どもはさらにコントロールがしにくい状態。それには子どもの脳のある部分が関係しています。
理由3:子どもの脳は、ブレーキが未発達
おいしそうなドーナツを目の前にしても、私たちは「食事の前だから」とがまんすることがあります。「食べたい」衝動をコントロールするとき、活躍しているのが額の奥の「前頭葉」です。
この前頭葉は成熟が遅く、25~30歳まで完全には発達しないそう。一方ドーパミンの働きは10代の頃もっとも活発。子どもはスマホに夢中になりやすく、ブレーキは未発達な状態にあるのです。
いつもスマホが気になるので、子どもたちは「宿題しながらYouTube」といったマルチタスクに挑戦しがち。でも、同時に複数の作業を行える「マルチタスカ—」は人口の1~2%ほどしか存在しません。スマホが目に入っただけでも理解の妨げになってしまう事例も紹介されており、「ながら」は今すぐやめるべき勉強法です。
スクリーンタイムの管理と、運動が有効
デジタル・デバイスの魔力を熟知したスティーブ・ジョブズは自分の子どもにiPadを使わせず、ビル・ゲイツは子どもが14歳になるまでスマホを持たせませんでした。子どもの自主性にまかせるだけでなく、スクリーンタイムを設定し、アプリの利用状況を確認するようにしましょう。「宿題中はスマホの電源を切り別の部屋に置く」「LINEのチェックは1時間に1度」など、利用について親子で再確認も。
スマホの通知が気になることで失われがちな集中力には、運動が有効。驚くことに、 5~6分、1回だけの運動でも効果があるそうです。
まとめ & 実践 TIPS
オンラインで友人とつながるなどメリットも多く、ゼロにすることは考えにくいスマホ利用。「集中力の低下」「睡眠の質の悪化」などを防ぎ、子どもも大人も上手に活用したいですね。
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