不登校の背景に「貧困問題」も 文科省が12年ぶり対策検討
文部科学省は先頃、「不登校に関する調査研究協力者会議」を発足させました。不登校問題に関して有識者を集めて検討するのは、2003(平成15)年3月に報告をまとめて以来12年ぶりです。今回の検討では、一部の不登校の背景にあると見られる「貧困問題」や発達障害、さらには未然防止のため不登校と判定される前の「潜在期間」にどう対応するかなどにも取り組むことにしています。
1980(昭和55)年代ごろまで不登校は「登校拒否」と呼ばれ、主に「学校嫌い」で欠席が続いているのだという見方が大勢を占めていました。しかし「学校不適応対策調査研究協力者会議」は1992(平成4)年3月の報告で「登校拒否はどの児童生徒にも起こりうる」という見方や政策の転換を迫り、「不登校」の呼び名も提案。その10年後に設置された「不登校問題に関する調査研究協力者会議」の報告は、単に心の問題としてだけ捉えるのではなく、進路の問題も含めて将来の社会的自立に向けて支援することを訴えるとともに、立ち直りを待つだけで何もしないという極端な対応を改め、必要な場合には登校刺激を行うなど働き掛けや関わりが重要であること、フリースクールなど民間施設やNPOとの積極的な連携協力を行うことなどを提言しました。その間、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を進めたり、学校外施設で受けた指導やIT(情報技術)を活用した学習活動を学校の出席扱いにできるようにしたりするなどの施策も進めてきました。
それでも不登校はピーク時に比べ減ったとはいえ、2013(平成25)年度は小・中学生を合わせて約12万人と86人に1人(1.17%)、義務教育ではない高校でも5万5,000人を超え60人に1人(1.67%)となっているなど、深刻な状況にあることに変わりはありません。
文科省では、昨年11月に「全国不登校フォーラム」を開催したほか、省内の検討チームで論点を議論してきました。それに基づいて今回の協力者会議に示した論点例を見ると、▽不登校の未然防止、早期対応(「潜在期間」の対応等)▽発達障害、貧困問題等との関係……が入っていることが目を引きます。
文科省の調査統計上の定義では、不登校は年間30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的な理由を除いて「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者」とされています。しかし、年間30日に至らないまでの休みがちな者はもとより、休み出す前の「潜在期間」から対応を行うべきだとの指摘もあります。また、経済的な理由に関しても、家庭の貧困や生活環境の影響で学校に行きづらくなったり、心理的な困難をきたしたりするケースにも注目が集まっています。発達障害については前回の報告でも言及されていましたが、特別支援教育の取り組みも進むなか、一人ひとりの困難に対応したきめ細かな対応が求められます。