『ベネッセ進学フェア2015』講演会【第4回】幸せな中学受験をつかむ家庭の力

受験・教育相談の実績で、保護者のかたから絶大な支持を集める塾講師・松島伸浩氏が、中学受験における親子の関わり方についてお話しします(『Benesse進学フェア2015』講演会 2015<平成27>年5月、東京国際フォーラムより)。

<Benesse進学フェア2015 松島伸浩さん講演会(動画)>



事例で考える親子の関係

「幸せな中学受験」の「幸せ」とは「入学した先で幸せになる」ことです。進学してから伸びることが大切で、12歳がピークではいけません。この点を保護者の方々はわかっているはずなのですが、いざ受験勉強を始めてみると、ゴールがどうしても12歳(中学入試時)になってしまいます。

いくつかの事例で考えてみましょう。

●タイプA 甘えん坊・ぐずぐず男子×物量作戦大好きママ
このケースでは、保護者が、子どもが暇になることを許せず、何でもよいからスケジュールを埋め尽くしたいのが特徴です。しかし「山のようにやるからよい」ということは決してありません。勉強は量も大事ですが、質も大事だからです。ですから、第三者としてのアドバイザーを得て、その人に手綱を握ってもらうのがよいでしょう。

●タイプB まじめ・優等生タイプ男子×お膳立て先回りママ
このケースの子どもは第1志望に合格しましたが、中高では勉強から逃避してしまいました。中学校に合格した時点で保護者が勉強から手を引くと、子ども本人がモチベーションを保てませんでした。自分でやった、という達成感がなかったためです。達成感を自分自身が持ち、乗り越えていき、何かをつかむことが中学受験の意味であり、財産なのです。



受験を成功に導く家族同士の協力

「夫源病」という言葉をご存じでしょうか? 父親が仕事から帰ってくる時間になると、母親の気分が悪くなるという状態です。「夫が帰ってくるからちゃんとしなくては」という母親の気持ちがその状態を生み出します。母親は完璧を目指そうと、がんばりすぎる傾向があります。そうして、抱え込んでしまうのです。こうした状態に陥らないためには、両親が協力して、家族間のストレスを発散させ、解消させることが必要です。
普段から、母親がにこにこしている家庭では、受験がうまくいっていることが多いようです。母親がどーんと大きく構えているケースでは受験に成功することが多いといえます。

子どもは大学を卒業するころまでは、話を「聞く側」にいます。小学校・中学校・塾・高校・大学と、授業はほぼ聞く側です。ですから、話を聞いている量の差が、実は学力の差になっています。そのため、特に小学校低学年時代は「聞く習慣」を身に付けることが大切だと思います。会話は家庭教育の第一だといえるでしょう。父親との会話、母親との会話、あるいは三人での会話……そうしたなかで子どもは言葉が磨かれてゆき、語彙(ごい)も増えます。
また、「どうしてそう思ったの?」「どうすればいいと思う?」という投げかけが大事です。いわばコーチング的なものです。こうしたことによって、一つひとつの言葉をしっかりとらえて、話すことができるようになります。



子どもを上達させる保護者の力とは

勉強を「やらされている」うちは自分で考えていませんから、身に付きにくいといえます。小学3~4年生までは、楽しく学ぶことが大事ですから、楽しく学べるプログラムを組みます。5年生は鍛える時期です。ですから、やりたくないものも、5年生にはやらせます。そういう時期も必要です。ただ、それまでの学びに対する考え方として、「勉強が面白いと感じた経験」が多ければ多いほど、鍛錬の時期も乗り越えられます。また、子ども自身も、算数はできるけれどほかの教科はできない、といったケースなどに見られることですが、得意教科という一本の柱(強み)があれば、それに合わせた底上げができますので、かなり有利になるといえます。

「あの子は僕より頭が悪い」「私よりテストできない子がいる」など、あまり意味のない比較をしがちなのが、子どもというものです。ですから、「自分との闘い」であることを常に子どもに投げかけましょう。そして、一つでも前よりできていれば、「がんばったね」「昨日よりできているね」と言ってあげることが大事です。

たとえば塾の理科のテストが50点だったとします。保護者はがっくりくるでしょう。しかし、50点ですから、「○」になった問題もあるわけです。その「○」のなかで、難しそうだな、と思った問題を一つ選んで「これができたの? 立派ね。お母さんにはわからなかったわ」と言ってみましょう。子どもが「それはできた」と答えたら「どうしてできたの?」とフィードバックしてあげます。そうしたら「先生に授業の時、質問したんだよ」と答えるでしょう。そうすれば、子どもは「あ、質問したからできたんだ」と振り返ることができます。
「50点」が目に入ると、保護者のかたは「だめだ」と思うかもしれません。しかし、よいところをひとつでも見つけ、その時の点数だけではなく、中身も見てあげることができるかどうかが、その後を左右するでしょう。



「幸せな中学受験」をつかむために

中学受験で忙しいからとお手伝いをさせないよりも、決まったお手伝いはさせたほうがよいと思います。なぜなら、自分のことができるようになるということは、自分の頭で考えることにつながるからです。忘れ物がなくなったら学力(偏差値)が伸びたというケースもけっこうあります。忘れ物がなくなるということは、自分で計画を立てていろいろ考えられるようになったことなのです。この時、子どもにはもう一人の自分がいて、見下ろしているような状態にあるのでしょう。そういう時期が来たとしたらしめたものです。そのための保護者にできる働きかけが、役割を与えてお手伝いをやらせることです。お手伝いは馬鹿にできないもので、本人の成長につながります。他者性や社会性を磨くには、とてもよいことです。「家庭のおきて」のようなものを作って、お子さまにさせてみるのもよいでしょう。

4年生くらいの時、子どもたちには答えを出すということ自体が目標になっていて、そこで「もういいや」となってしまいがちです。しかし、答えが出たら、「なぜそうなったのか」などを考え、過程を楽しむことが本当の学びの面白さです。その面白みを知ったら、子どもは「勉強しなさい」と言われなくても、面白がって自分で勉強し始めます。「先生、もっと違うやり方があるかもしれないよ」と言える子どもに育つと、中学受験だけではなく、大人になってからもいろいろな発想や切り口を持てる可能性があると思います。

中学受験はつらく厳しいものではありません。もし、子どもの表情や態度にそんな様子が表れていたら、それは子ども自身にではなくて、ほかに問題がある可能性があります。ぜひ親子で楽しんで幸せな受験をつかんでほしいと思っています。


プロフィール


松島伸浩

過去25年でのべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績を持ち、保護者から絶大な支持を得ている。子育て講演会や教育講演会は申し込みが定員を超えるため抽選になるほどの人気である。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中。

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