『ベネッセ進学フェア2015』講演会【第2回】「目標を達成するための心構え、子どもの可能性を伸ばす子育て術」

元プロテニスプレーヤーで、現在はスポーツキャスターとして活躍中の杉山愛氏。そして、愛氏のお母さまで、スポーツ教育研究者として選手の指導を行っている杉山芙沙子氏が、お子さまのやる気を引き出すヒントについて教えてくれます(『Benesse進学フェア2015』講演会 2015<平成27>年5月、東京国際フォーラムより)。

<Benesse進学フェア2015 杉山愛さん、杉山芙沙子さん講演会(動画)>

テニスと勉強を両立させるために

:テニスは4歳で始めました。体を動かすことが大好きで、テニスをやっていた両親について、テニスコートに行ったのがきっかけです。小学2年生の時、たまたま家の近くの車で15分くらいの所に本格的なテニス・アカデミーができ、そこに入ることになりました。同時に、プロになりたいという気持ちも芽生えました。

大変だったのは、テニスと勉強の両立です。宿題もけっこう多かったので、宿題の時間を割き、集中してがんばりました。



保護者としてのサポート……杉山家の子育て論

芙沙子:「がんばりなさい」と言ってお茶を出すだけが、保護者の役目ではないと思います。子どもがどこを理解して、どこを理解できていないのかは、そばにいる保護者がいちばんわかっていると思います。今思い出すと、子どもが生まれた時には、「子どもは自分のものではなく社会からの預かりもの」だと強く感じていました。

子どもが独立するまでの18歳、20歳、人によっては25歳や35歳かもしれませんが、80年、90年の人生の中で、親子でいられるのは、それだけの間しかありません。その期間、縁があって保護者のもとに子どもが来て、自分たちの方針で教育して社会に返す。そのようにして、社会に貢献していく人を作るのが、子育てだと思っています。



「ルーティン・ワーク」の大切さ

:毎日毎日コツコツやっていかなければ、なかなか自分の力にはならないと思います。良い日もあれば、悪い日もあるでしょう。その中で毎日その日のベストを尽くしていくのです。これは、小学校時代からプロになるまで、変わらぬスタンスでやり続けました。気分が乗らない日にも、うまくいかない日にもがんばれる力を付けることは、スポーツ選手にとっても、ビジネスパーソンにとっても、中学受験を目指す小学生にとっても共通しているのではないでしょうか。

つまらない時には、つまらないまま、だらだらとするのもひとつの手ですが、それでは一歩前に進むことはできません。ですから、今日は気分の乗らない日だ、ということを受け入れて、丸ごと楽しむために、自分から「ワクワク・スイッチ」を入れることも、ひとつの選択だと思います。「つまらないな」「厳しいな」と思った時は、練習だったり、トレーニングだったり、勉強だったり、それぞれ楽しめるようにやり方を工夫するのもよいでしょう。「今日は、こっちは乗らないけれど、あっちなら楽しめるような気がする」ということもありますから、やり方によってはその時間が充実すると思います。

25歳の時にスランプが訪れ、目の前に大きな壁ができました。その際に試行錯誤して積み重ねていったものが、「ルーティン・ワーク」として日常生活で23個、試合の時は33個でき上がりました。
たとえば、朝30分の時間を取って「呼吸法」をしています。下っ腹に新鮮な空気を、エネルギーがたくさん入ってくるイメージを持ちながら入れます。そして、吐く時に不安な要素(緊張感、自分のストレス、疲労感など)を、息と一緒に出します。こうしたルーティン・ワークは、最初は10個くらいでしたが、どんどん増えていきました。

なぜルーティン・ワークをするのかといえば、心と体の準備をして、よいパフォーマンスや練習に結び付けることができるからです。
毎日毎日することによって、自分の体の変化に気付けますし、底力、すなわちがんばれない時もがんばれる力に結び付けられます。ですから、ルーティン・ワークは、選手時代の自分にとって、なくてはならないものとして、毎日繰り返していました。



大きな実を結ぶ小さながんばり……子どものプロセスを評価する

芙沙子:小学生の子どもが帰宅した時、家族や自分の靴を片付けて玄関をきれいにできているでしょうか。ランドセルをリビングに置きっぱなしにして、着替えもしないで休んでいるようでは、いやなことはやらないという日々がつながっていってしまいます。
「帰ってきたら靴はちゃんとそろえる」「手を洗う」「うがいをする」「おやつの前には手洗い」「かばんは自分の部屋、あるいは決まった場所に置く」など、日常生活にはこうした小さなことがたくさん転がっています。

入試の日が必ずしもピーク・パフォーマンスの日ではないこともあるかもしれません。保護者にも子どもにも気分が乗る日・乗らない日があると思います。しかし、実は、毎日がんばっていれば、その積み重ねが、脳を助けてくれるという医学的なエビデンス(=根拠)があるのです。

保護者として大切なのは結果ではないと思います。たとえばソチ・オリンピックのフィギュアスケート競技で、浅田真央選手は、ショート・プログラムでの成績は振るわなかったけれど、翌日のフリー・スケーティングで最高のパフォーマンスを見せてくれました。その際、多くの人が感動して涙しましたが、浅田選手はメダルをとっていません。しかし、初日に失敗した浅田選手が次の日に、それまで練習してきたことを全部出せたことに、感動をもらったのだと思います。

受験も同じではないでしょうか。もしよい結果でなかったとしても、それは失敗ではなく次へのステップだと思います。そこで何が良くて、何が悪かったのか、という原因を考えるきっかけをくれたにすぎないのです。そこに、時間も空気も親子で共有することの大切さがあることが受験をとおしてわかりますし、子どものプロセスを評価してあげられると思います。

:普段がんばっていないと、いざという時もがんばれないと思います。勉強にしてもスポーツにしても、引き出しをたくさん増やして「これだけやったんだから」といえるものがあるか、ということが、がんばれるパフォーマンスにつながるでしょうから、やはりプロセスは重要だといえます。


プロフィール



愛さん:4歳でテニスを始め、15歳で世界ジュニアランキング1位。17歳でプロ転向し、オリンピック4回出場、ダブルスで世界ランク1位に。現在は、スポーツキャスターとして活躍中。芙沙子さん:スポーツ教育研究者。現在は選手の指導を行う傍ら、講演や執筆活動で活躍中。

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