地方創生で都市部大規模大の入学者抑制へ、受験生への影響は?

文部科学省は、2016(平成28)年度から一部の私立大学の定員超過の状況を是正するため、大規模校を中心に入学定員を超えて入学者を出した大学に対する補助金カットを強化することを全国の私立大学に通知しました。大都市部の大規模校に学生が集中するのを防止し、地方大学に学生を誘導することで地方の人口流出に歯止めをかけることが狙いです。ただし、有名大学などの入試合格者数の減少にもつながるため、大学志望者に思わぬ影響が出ることも予想されます。

私立大学は、学部などごとに文科省の認可によって入学定員が決められています。しかし、大学志願者は複数大学を受験するのが普通ですから、各大学は入学辞退者を想定して入学定員よりも多めに合格者を出しています。その結果、入学辞退者が予想より少なかった場合、入学定員超過となります。文科省によると、私立大学全体で2014(平成26)年度は約4万5,000人の入学定員超過があり、そのうちの約8割が東京・中部・近畿などの三大都市圏に集中していました。一方、私立大学全体で見ると45.8%の大学が定員割れを起こしています。大都市部の有力大学などに全国から学生が集中し、逆に地方の私立大学には学生が集まらないのです。

また、大学進学を契機に地元を離れた学生は、卒業しても地元に戻らないケースが多く、地方の人口減少の原因の一つとなっています。このため地方創生を掲げる安倍晋三内閣は、大都市部への学生集中を抑制する方針(外部のPDFにリンク)を打ち出しました。文科省の通知はこれを受けたものです。具体的には、学生8,000人以上の大規模校では、入学者数を入学定員で割った入学定員超過率が現行は「1.2倍以上」で私学補助金を受けられなくなりますが、それを2016(平成28)年度は「1.17倍以上」、17(同29)年度は「1.14倍以上」、18(同30)年度は「1.10倍以上」へと段階的に引き下げ、それを超えた大学は補助金を全額カットします。中規模校もほぼ同じ仕組みとなります。一方、学生数4,000人未満の小規模校は地方の私立大学が多いことから、補助金全額カットのラインを現行どおり定員超過率「1.3倍以上」のまま据え置きます。これによって三大都市圏全体で約1万4,000人、東京圏のみで約1万1,000人の超過入学者を抑制できると文科省は試算しています。

さらに2019(平成31)年度からは、すべての私立大学に対して入学定員超過を認めないこととし、もし入学定員を超過したら、その学生数の分だけ補助金をカットします。ただし、合格者を減らしたため入学者が定員を割るというケースも想定されるので、入学定員超過率が「0.95~1.0倍」の私立大学には学生抑制の努力をしていると認め、逆に補助金を上乗せする優遇措置を取ります。いずれにしろ、大都市部の私立大学、特に志願者の多い大学は苦しい選択を迫られることになりそうです。

これらの措置は受験生にとって、2016(平成28)年度から大都市部の有名大学や人気大学の入試において、従来よりも合格者数が実質的に減る可能性があるということを意味しています。地方創生のための大都市部の学生抑制策が、大学受験地図にどのような影響を及ぼすことになるのか、慎重に見守る必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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