工場見学をどう学びに生かす? ~工場見学の魅力とは?~【前編】

レジャーや観光としても定番となった一方で、社会科見学や夏休みの自由研究としても活用できる工場見学。どのようなポイントに着目すれば学習にも生かすことができるでしょうか。大阪経済大学経済学部教授の山本俊一郎先生に教えていただきました。



やっぱり行ってみないとわからない! 工場見学の魅力

ブームとしてもすっかり定着した工場見学ですが、実は工場見学が注目されるようになったのは近年、「ものづくり」=「かっこいいこと」というイメージが定着したことが大きな理由として挙げられます。
1950年代後半から1970年代にかけての高度経済成長期までは、工場には環境を著しく破壊したり、公害をもたらしたりするものとしてマイナスのイメージがありましたが、その後、環境に配慮された工場が増えました。そして2000年以降は中国や東南アジアを中心とする海外に拠点を置いていた工場をもう一度国内に戻し、日本のものづくりを見直そうという気運が高まってきたのです。
日本の「ものづくり」の強みとして、熟練の職人やベテランの工員たちの言葉にはできない勘や、経験を通じてしか身に付けることができない知識が注目されるようになったのもこの時期です。

工場見学は以前から、社会科見学など野外学習の一つとして取り入れられてきましたが、現在では大学生にとっても、なかなか知ることができない中小企業を知るきっかけになるため、就職活動やキャリア教育の一環としても注目されています。
さらに、大人になってからも知的好奇心を満たす生涯学習として関心が高まっています。
このように、子どもも大人も楽しめて学びのきっかけにもなるのが工場見学の魅力ともいえるでしょう。



工場見学の事前準備

工場見学を学びにつなげるにはやはり、少しでも事前準備をしておくことをおすすめします。特に、「工場の何を知りたいのか」「工場の何を見学したいのか」を明確にしておくとよいでしょう。

たとえば、インターネットを利用して、どんな商品の製造過程を見られるのか、製造過程のどの部分を見学できるのかについて、お子さまと一緒に事前に調べておくだけで、当日の見どころを把握することができます。
事前に調べられない場合でも、保護者のかたから「材料が入った大きなタンクがあるかな?」「すごい速さで組み立てられていく部品が見られるかもしれないね」など、また、工場に着いたら、「実際に行かないと見られないものをひとつでも見つけよう!」などと声をかけてあげてください。その一言があるだけで、お子さまのモチベーションもぐっと上がるはずです。


プロフィール


山本俊一郎

大阪経済大学経済学部教授。専門は経済地理学。中小零細製造企業が集積する産業地域の持続的発展に関する研究を行う。著書に『工場見学のすすめ』(共著、法律文化社)、『大都市産地の地域優位性』(ナカニシヤ出版)など。

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