誘いを断れない子ども……。どうしたらいいの?[ソーシャルスキル]

人からの誘いや頼みを断るのは、大人でも難しいことですよね。子どもはこうした場面で、なかなか上手に自分の気持ちを相手に伝えられずトラブルが発生してしまうことが少なくないのです。今回も具体例を挙げながら、上手な断り方、自己主張のしかたを考えてみましょう。

(相談例)
中1の息子が、友達から「バレーボール部に入りたいんだけど、一緒に入らないか」と誘われたようです。本人はバスケットボール部に入りたいと思っているのですが、なかなか友達の誘いをうまく断れないようです。部活以外のことでも自己主張をするのが下手な息子。どのようにアドバイスすればよいでしょうか。

相手を傷つけず、自分の気持ちを理解してもらう

友達からの誘いを断れず、どうしようと思いつつも「あー、うん……」と言って承知してしまう。息子さんは、友人関係を保つために、こうした行動をとったのかもしれません。しかし、自分の気持ちを伝えられなかったことが尾を引き、のちのち友達との関係が悪化してしまう可能性があります。

中学生前後の子どもは自意識が過剰で、被害妄想的なところがあります。「きっと友達は私がバレー部に入らないと怒ってしまうに違いない」と思ってしまい、なかなか自分の意見を言えないのです。けれど、友達とよく話をしてみれば、バレー部に入ることを強制しているわけではないかもしれません。自分の気持ちを伝えたら、友達もバスケ部への入部を応援してくれるかもしれません。

「私は、バレー部も楽しそうだと思うけど、実は前からバスケ部に入りたいと思っていたんだ。ごめんね」と自分の気持ちを伝えてみたら、とアドバイスしてみてはいかがでしょうか。ポイントは相手を傷つけず、自分の気持ちを理解してもらえるように話すこと。せっかくの誘いを断って申し訳ないという気持ちを伝えつつ、断る理由をちゃんと言うことが大切です。できれば「部活がない日は一緒に遊ぼうね」など、「友達との関係を大切にしたい」という気持ちを伝えるひと言を添えるようにしましょう。

伝え方ひとつで、相手の受け取り方も違うことを学ばせる

一方、「一緒に~しようよ」と誘いがあった時、「絶対ヤダ!」などと理由も言わずに断ってしまう攻撃的な口調のお子さんの場合も注意が必要です。誘った友達はなぜ断られたのかわからず、傷ついてしまいます。

自己主張しているのはいいことですが、相手にけんかを売るような言い方をしてしまうのは、よくありません。この場合は、「絶対ヤダ!」と断られた時の相手の気持ちをイメージさせてあげましょう。同じことを伝えるにも、言葉を選んだり、付け加えたりすることで、相手の受け取り方が違うことを学ばせる必要があります。

子どもは相手のことを思いやる想像力がないため、上手な断り方を身に付けるのは、時間がかかるかもしれません。その場合は、親がモデルを示してみましょう。家庭で誘われる側と断る側に分かれ、ロールプレイしながら、相手の気持ちを考える練習をしてみるとよいでしょう。

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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