所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て 家庭学習の国際比較(1)~家庭学習の時間と学習習慣

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。



学校から帰ってきても、なかなか宿題に手をつけずにいる子どもにイライラしてしまう経験、皆さんにはありませんか。ベネッセ教育総合研究所が2011(平成23)年に小中学生の保護者を対象に行った調査「第4回子育て生活基本調査報告書(小・中版)」(外部のPDFにリンク)第1章によると、小1を除きどの学年でも3~4割の保護者が子育ての気がかりとして「家庭学習の習慣」を挙げています。でも、子どもの「家庭学習」への保護者の関心が高いのはもしかしたら日本だけ、なのでしょうか。また、日本の保護者は子どもの勉強に厳しすぎるのでしょうか。そこで、家庭学習の時間や保護者のかかわりについて、日本とほかの国を比較した調査結果を見てみたいと思います。

少し古いのですが、ベネッセ教育総合研究所が2006~07(平成18~19)年に、東京・ソウル(韓国)・北京(中国)・ヘルシンキ(フィンランド)・ロンドン(イギリス)・ワシントンDC(アメリカ)の6都市の10~11歳の子どもを対象とした調査「学習基本調査・国際6都市調査」(外部のPDFにリンク)を行っています。この調査の結果の第1章第2節から家庭学習時間と、その中で宿題が占める割合について簡単にまとめると、欧米の3つの都市(ヘルシンキ・ロンドン・ワシントンDC)はいずれも家庭学習は平均で毎日1時間程度、そのうち約45分間が宿題です。これに対して東京は、家庭学習時間は平均約1時間40分とやや長め、ソウル・北京は平均2時間以上とさらに長い時間勉強しています。宿題は欧米と比べ、北京が平均約60分とやや長め、ソウルと東京は30~40分程度で、やや短めでした。

つまり、家庭学習のほとんどが宿題をしている欧米3都市に対して、アジア3都市は宿題以外の家庭学習時間が平均で1~2時間程度もあるわけですが、通塾率を見ると東京は約50%、ソウル・北京ではいずれも75%前後と、ほとんどの子どもが塾に通って勉強していることがわかります。特にソウルは週5日以上塾に通う子どもの割合が非常に多く、1回あたりの塾での学習時間も長めです。

では、ソウルの子どもたちは保護者から言われなくても勉強するのか……と思いきや、「ほとんど毎日、親は私に『勉強しなさい』と言う」という調査項目を選んだ子どもの割合は、なんとソウルが最も高く66.8%。長い時間勉強しているのに、毎日勉強するよう保護者から言われているんですね。東京は37.7%で、これは最初に書いた「家庭学習の習慣」に関する親の気がかりと数字的にほぼ一致します。北京・ヘルシンキ・ワシントンDCも日本とほぼ同じ割合で、日本(東京)の保護者だけが特段にうるさく言っているというわけではなく、どこの国の保護者にとっても家庭学習の習慣付けは気がかりなんですね。

また、家庭学習の中身を見てみると、東京の子ども特有の課題があることがわかりました。「出された宿題をきちんとやっていく」という質問では、ほかの国の都市と同様に9割以上が「あてはまる」「まああてはまる」と答えているのですが、「授業で習ったことを、自分でもっと詳しく調べる」「授業で習ったことは、その日のうちに復習する」という質問項目に対して「あてはまる」「まああてはまる」と答えている割合は、ほかの5都市はだいたい7~8割であるのに対して、東京の子どもは5割前後でした。宿題のように与えられた課題だけではなく、自分で興味を持ったり、自分自身が決めたりした学習内容に取り組む子どもの割合が少ないのは残念ですね。

文部科学省の「全国学力・学習状況調査」で高い成績を上げている秋田県では家庭学習ノートを取り入れ、子ども自身が決めた学習内容を毎日進めることで学習習慣が身に付いていると言われています。我が家の話で恐縮ですが、娘が小学生の時、イタリアに関係するストーリーのマンガが好きで、「イタリア語を勉強したい」と言うのでイタリア語の簡単な単語集を買ってあげたら毎日勉強し始め、それ以外の勉強に取り組むきっかけにもなりました。

時にはお子さまへの声かけの角度をちょっと変えて、「スポーツやマンガ、何でもいいから、自分の好きなことをテーマにして勉強してみたら?」と声をかけるのも、お子さまの家庭学習へのやる気を高めるきっかけになるかもしれませんね。

プロフィール

沓澤 糸

大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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