増える大学生のインターンシップ 大学と企業の間に意識の違いも

大学生の就職活動日程が変更され、今年(2015<平成27>年)3月から、来春卒業予定者の就職活動が始まっています。その中で、在学中に企業などで就業体験などを行う「インターンシップ」が注目を集めています。文部科学省や大学などは、キャリア教育の一環としてインターンシップを推進していますが、受け入れ側の企業には別の意図もあるようです。日本学生支援機構や経済産業省の調査から、インターンシップに関する大学と企業との意識の差が浮かび上がってきました。

日本学生支援機構が2014(平成26)年11月に実施した調査によると、大学生全体の11.8%がインターンシップを経験しています。3年生は18.7%、4年生は21.8%が経験しており、4年生だけを見ると5人に1人が企業などでインターンシップを経験しています。インターンシップの申し込み窓口は、「大学等を通じて」が58.7%、「インターンシップ紹介サイト」が21.3%、「企業に直接」が14.5%などで、約6割の学生が大学を通じてインターンシップを申し込んでいます。大学を通じたインターンシップが多いのは、文科省などがキャリア教育の一環として、インターンシップの実施を大学に強く求めているためです。

文科省・経産省・厚生労働省によるインターンシップの指針(外部のPDFにリンク)では、会社説明会など企業の広報活動解禁前(大学3年生の2月末まで)に実施したインターンシップについては、自社への採用のために利用することを禁じています。このため経産省などは、企業がインターンシップで大学生を受け入れる意義として、社会に対する適応能力の高い実践的人材を、企業全体で育成するという社会貢献などを挙げています。しかし、企業の受け止め方は必ずしもそれだけに限らないようです。

2014(平成26)年10月に実施した経産省の委託調査(外部のPDFにリンク)によると、インターンシップを実施した経験のある企業は、全体の35.7%(大企業55.2%、中堅企業41.7%、中小企業27.4%)となっています。このうちインターンシップを実施した企業で、実習生に自社への採用内定を出したのは53.6%(大企業66.7%、中堅企業55.4%、中小企業42.2%)、さらに内定を出した企業のうち90.6%(大企業96.3%、中堅企業87.1%、中小企業86.0%)が、内定者が「入社した」と回答しています。実際、インターンシップの実施目的を見ると、「自社の認知度や理解度の向上」(62.7%)と「新卒の採用活動の一環」(62.0%)が圧倒的多数を占めています。企業にとって人手や経費が掛かるインターンシップは、大学のキャリア教育への協力や社会貢献という役割よりも、やはり優秀な学生を採用するための方策のひとつという意味合いが強いようです。

大学も企業も実践的人材育成を必要としており、大学生のインターンシップは今後さらに広がっていくことは確実でしょう。その中で、あくまでキャリア教育を重視する文科省や大学と、採用のために活用したい企業という両者の意識の差が、これから拡大していく大学生のインターンシップに、どのような影響を及ぼすのかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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