小学生の宿題、親の関わり方【前編】子どもの意欲を引き出す言葉と方法

「宿題もせず遊んでばかり」「途中で宿題を放りだして遊んでしまう」など、お子さまの宿題に関して、こんなお悩みを抱えるご家庭は多いのではないでしょうか。でも、ちょっとした工夫で、お子さまが主体的に宿題に向かうようになることも珍しくありません。教育評論家の親野智可等先生に、お子さまの宿題と保護者の関わりについて伺いました。



保護者の言葉が子どもの意欲を引き出す

宿題の役割は大きく二つ挙げられます。一つは自分で学習する習慣を身に付けること。二つ目として、限られた授業時間で扱えない部分を家庭学習で補うという側面もあります。後者には、授業内容の反復による基礎学力の定着のほか、授業で発表や話し合い活動をする前提としての調べ学習も含まれます。
保護者がお子さまの宿題に関わる時、最も気を付けなくてはならないのは、「宿題はつまらないもの」という思いを抱かせないことです。学習への意欲を高めるチャンスととらえて、宿題を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
子どもは誰しも勉強ができるようになりたいと思っています。しかし、保護者の声かけの仕方によって、そうした潜在的な意欲が摘み取られてしまう場合もあります。「早く宿題をしないとダメでしょ」「どうしてこんな問題もできないの」。こうした否定的な言葉ばかり投げかけていると、子どもは宿題どころか学習そのものが嫌になってしまいます。

心理学に「つり橋効果」という理論があります。男女がデートをする時、つり橋を一緒に渡ると恋愛が成就する確率が高まるのだそうです。一緒に渡ると怖いから心臓がドキドキする。人間の脳はそのドキドキを「この人のことが好きなのかな」と勘違いしてしまうのです。
お子さまにとっての学習も同じです。宿題に取り組んだ時に、お子さまをたくさんほめてください。子どもはほめられればうれしいものです。本当は、ほめてくれたその言葉がうれしくて楽しく感じるのであり、勉強の中身についての楽しさではないのです。でも、勉強に関してほめられたので、「勉強って楽しい」と思えるようになるのです。逆に、「遊んでばかりいないで勉強しなさい」と言われると、その言葉自体を不愉快に感じ、そう言われ続けることで勉強そのものが不快に感じられるようになってしまうのです。

保護者に第一に心がけてほしいのは「言葉の工夫」です。プラスのイメージの言葉を投げかけることで、学習に対する偏見を取り除くのです。「いま宿題をやっておけば、あとでたっぷり遊べるよ」「授業で手が挙げられるよ」というふうに、「宿題をするとこんなによいことがある」というメッセージを発信し続けるのです。
とりあえずどのようなささいとでもよいので、まず「ほめる」というのも有効な手段です。宿題を見る時に「もっときれいに書きなさい」「これとこれが間違っている」というふうに、ミスばかり指摘していたのでは、子どもは不愉快になるだけです。まずはよいところ、できているところを探してほめましょう。
ただ漠然と見ているだけではよいところは見つかりません。漢字の書き取りなら、まずは上手に書けている字を探して、「これとこれはうまく書けているね」とほめます。たくさんほめてから、「じゃあ、こっちをちょっと直してみようか」と汚い字を直させる。そういう順番が大事なのです。算数のドリルなら、まず正解を見つけてハナマルをつけ、「式もきちんと書けたね」などと言ってほめる。そのうえで「じゃあこれとこれを直そうか」と言うと子どもは進んでやり直すでしょう。



お子さまの「個性」に合わせて工夫する

もう一つ心がけていただきたいのは「方法の工夫」です。励ましの言葉をかけようにも、なかなか宿題に取りかからないお子さまも多いと思います。発達段階や年齢によって自然とできるようになる場合もありますが、お子さまの個性に左右されるほうが多いようです。「もう4年生だから一人でできるはず」などと思わずに、お子さまの性格に合った方法を工夫するべきです。
子どもにとっていちばんのハードルは宿題への取りかかりの部分です。逆にいえば、お子さまがノートやドリルを開いて宿題に取りかかってしまえば、半分は終わったようなものです。あるご家庭では子どもが帰宅したら、広くて浅い箱にランドセルの中身を全部出させるそうです。遊びから帰ってくると道具が全部出ているので、宿題に取りかかりやすくなるのです。この方法を始めてから、このご家庭では保護者が注意する回数が半分くらいに減ったそうです。
それをさらに一歩進めたのが「とりあえず準備方式」です。帰宅したらすぐ、宿題に必要なものをテーブルや机の上に並べる。そうすると、遊びから帰ってきてノートを開くまでの時間がさらに短縮されるので、宿題に取りかかる心理的負担がかなり軽減されます。あらかじめ宿題のページを開いておくと、さらによいかもしれません。

1年生でも親に言われずに自分で宿題を始める子もいれば、放っておいても平気という子もいます。保護者にとっては、何も言わなくても自分で宿題を始めてくれる子ほど「よい子」に見えるものです。しかし、宿題を放っておいて趣味に没頭している子は、主体的に自分がやりたいことを持っており、自己実現力が高いともいえます。また、いくら叱っても平気で遊んでいる子は、ある意味、度胸があるわけで、そういう人が将来、大きなことをなしとげるかもしれません。
もちろん、保護者として、お子さまが学習を好きになれるよう工夫する必要はあります。しかし、それでも思うようにならないこともたくさんあります。そこで叱ってばかりいたのでは、子どもは自信を失うだけ。できることはしてあげて、それでも成果が出ない時は、無理強いせず、長い目で見てあげることも必要だと思います。

宿題をさせることそのものより、宿題を通じて勉強に対する前向きな態度や自信を高めていくことが大切なのですね。


プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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