小学生の宿題、親の関わり方【後編】宿題に関するお悩みに答えます!
親野智可等先生に保護者の宿題への関わりについて伺いました。今回はQ&Aのかたちで、お子さまの性格やご家庭の状況に応じた実践的な方法をお伝えします。
Q.何度注意しても子どもがなかなか宿題に取りかかりません
A.宿題への取りかかりは、お子さまにとって最大のハードルです。前編では「とりあえず準備方式」をご紹介しましたが、今回はその発展形をご紹介します。
その一つが「とりあえず一問方式」です。宿題になかなか取りかからないのは、宿題の全体像が把握できていないという不安に原因があります。そこで、家に帰ったら遊びに行く前に、とりあえず一つだけやらせるのです。漢字の書き取りなら一字だけ書く、算数なら一問だけやっておく。それから遊びに出かけるのです。一つでも手をつけておけば全体の見通しがつくので、帰宅後に本格的に取り組み始める際のハードルが下がるのです。
「模擬時計」で時間を見える化させる方法も効果的です。本物のアナログ時計の横に、画用紙で描いた時計を貼り、それが勉強開始の時刻を指すようにしておきます。本物の時計の針が勉強開始時刻に近付くにつれて、「やらなきゃ」という思いがだんだん高まってきます。あるいは、決まった時刻に音楽を流し、曲が終わるまでに机に向かうという方法もあります。自分で決めた曲なので、やらなければいけないという気持ちが強まるのです。
Q.学習の計画を立てても、好きなことばかり優先して守れません
A.学習を始める前に「締め切り」を決めるのも一つの方法です。6時までに書き取りを、6時半までに算数を終わらせるというように、あらかじめホワイトボードなどに締め切りを書いておき、ゴールの時間を明確化する。そのうえで、「終わったらテレビを見てもよい」「おやつを食べてよい」というように「ごほうび」を用意するのです。「するべき内容」「締め切り」「ごほうび」をはっきりさせておくと、子どもは張り切って取り組みます。
学校にある時間割をまねして、「家庭の時間割」を作るのもオススメです。何時何分から何をやるのかということを明確にするのです。ホワイトボードに時間の流れを書いて、「食事」「宿題」「ゲーム」「テレビ」などのプレートを貼っていきます。習い事のある日、ない日、土日など3パターンくらい作っておくとよいでしょう。これがあると、「水曜日は習い事があるから、宿題はこことここで分けてやろう」などど、自分で時間をコントロールするようになります。
保護者のかたはよく「時間を有効に使いなさい」と言いますが、その方法までは教えていません。大人でもシステム手帳などの時間管理のツールがないとスケジュールを立てられません。ましてや、子どもはなおさらです。時間管理術は隠れた学力であり、社会人にとっても必須のスキルです。自分で計画を立て実行し、修正するプロセスを繰り返すことで、生活を管理する術を習得できるはずです。
Q.学校の宿題が多すぎて子どもも親も毎日が大変です
A.学校の先生は、基本的にクラス全体に対して一律に同じ内容・量の宿題を出すので、学習が苦手な子どもは苦しい思いをすることが少なくありません。多すぎてお子さまの手に負えない場合は、思い切って先生に相談するのもよいと思います。
実は、宿題で苦しんでいるご家庭は多いのですが、先生は子どもに学力を付けることに頭がいっぱいで、宿題が多すぎるせいで遊べなかったり、親に叱られたりなど、家でも苦しんでいる子がいることまで気付かない場合もあるのです。クレームではなく、あくまでご相談というかたちで真剣に話をすれば、まともな先生なら考えてくれるはずです。
Q.共働きで子どもの宿題を見る時間があまりありません
A.ご両親がフルタイムで働いているご家庭では、できる範囲のことをやればよいと思います。宿題を見てあげられないことに罪悪感を持ち、自分を責めるようなことになれば、そのストレスがお子さまに向いてしまうことにもなりかねません。
こういう時こそ重要なのが、前編でお話しした「言葉の工夫」です。共働きのご家庭では、お子さまと触れ合う時間が少ない分、お子さまに投げかける一言ひとことがより重要になります。たとえば、お子さまが宿題への不満をもらしたとしたら、「何を言っているの。やらなきゃダメでしょ」と頭から否定するのではなく、まずは「そうだね」「大変だったね」と共感してあげる。そのうえで「じゃあ半分だけでもやろうか」「一緒にやろうか」と言えば、お子さまもやらなくてはいけないことはわかっているので、素直に取り組むはずです。やり始めたら案外スラスラ進んで、そのままやり終えてしまうこともあるものです。
一緒にいる時間を大切にして、できるだけよい言葉をかけることを意識しましょう。たとえ接する時間は短くても、言葉を通じて愛情は十分に伝わり、お子さまの自信につながるのです。
Q.平日とは違って長期休業でのサポートはどうすればよいのでしょうか。特に、夏休みの自由研究はどこまで関与すればよいか悩んでいます
A.まず、自由研究にどれくらいの労力をかけるのかを決めるのがよいと思います。自由研究を利用して、お子さまの力を最大限に伸ばそうと考えるのか。あるいは、完成させることを最低限の目標にするのか。その方向性を保護者がはっきり決めるべきです。その方向性によってサポートのしかたも変わってくるはずです。
有名な科学者の中にも、自由研究がきっかけでその道に進んだ人は少なくありません。徹底的に伸ばそうと思えば、保護者が徹底的にサポートするべきです。ネットで検索すれば、テーマやまとめ方がたくさん出てくるので、テーマ探しから保護者が手伝ってもよいでしょう。宿題だからそれなりに……という程度であれば、自由研究のキットを購入して、親子で一緒に取り組むだけでもよいと思います。製作過程の写真を撮影したり、感想を書いたりといった方法でまとめるだけでも、お子さまは充実感を得られると思います。
単に言葉で注意しても、子どもはうるさく思うだけで、勉強をするどころか、勉強自体が嫌になってしまいます。お子さまが宿題に取りかかりやすくなるよう、行動に結びつくような支援を心掛けていただければと思います。