広がる土曜学習…平日だけで学校は手いっぱい?- 渡辺敦司-

春休みは子どもたちにとって新学期に向けて胸をふくらませたり、不安を抱えたりする時期ですが、学校にとっては、人事異動もあるなかで新年度の計画づくりを急ピッチで進めるなど大忙しの時期です。とりわけ重要なのが、授業や学校行事の年間計画です。学習指導要領が目指す力を子どもたちに着実に身に付けさせるため、十分な計画を練る必要があります。そうしたなかで近年、土曜日の活用が注目されています。

鹿児島県では新年度から、全市町村で月1回程度、原則第2土曜日に平日と同じ授業が小・中学校で行われることになりました。県教育委員会が実施を求め、学校を所管する市町村教委がそれに応じたものです。県全域で足並みをそろえて土曜授業を実施するのは、2002(平成14)年度に全国で毎週土曜日を休みとする「完全学校週5日制」が公立学校に導入されて以来、初めてです。県教委は、同県の児童・生徒には(1)土曜日の過ごし方(2)思考力・判断力・表現力など知識の活用……に課題があることが各種調査から明らかになっており、その解決のためにも「土曜授業を含めた教育課程全体の見直しは有意義」だとの考えを示しています。

土曜日の活用に関しては、これまでにもお伝えしてきたように、2010(平成22)年に東京都教育委員会が踏み込んで以来、全国に波及し、そうした動きを国も容認しました。政権交代で第2次安倍内閣の文部科学相に就任した下村博文氏は当初から、大分県豊後高田市の「学びの21世紀塾」を具体例に、地域などとも連携した土曜授業に意欲を見せていました。2013(平成25)年末には法令を改正して土曜授業ができることを明確にしたことも、既にお伝えしました。その後、各地で土曜日に授業を行う学校が広がっています。

ところで、土曜日の活用がなぜ広がっているのでしょうか。もちろん、国が推進しているということもあるでしょう。また、地域によって動機に濃淡があるのも確かです。ただ、全国を見渡してみると、指導要領の求める学力などを身に付けさせるためには平日だけでは足りないといった実態も少なくないようです。
第1次安倍内閣で、政府の「教育再生会議」は「『ゆとり教育』を見直し、学力を向上する」として、授業時数の10%増や、教科書を厚くすることを提言しました。それが今の指導要領の基礎になっています。ただ、学習内容が増えたことはもとより、「活用」の授業には時間がかかるため、「平日は決められたカリキュラムをこなすのが精いっぱい」という声が、各地で聞かれます。

折しも安倍内閣の下で、再び次の指導要領が全面改訂されようとしています。しかも、既にお伝えしたように、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」への、大胆な転換を目指しています。学習内容や学習方法、授業時数など、子どもの実態も考慮した十分な検討が求められます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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