子どもたちはどう受け止めているのか? 「がん教育」の現場を専門家が解説
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著名人などのがん闘病のニュースが、世間をにぎわせている。そこで、ベネッセ教育情報サイトでは、子どもたちの「がん教育」について、「がん教育」の第一人者であり、東京大学医学部准教授の中川恵一氏に教えてもらった。
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「がん教育」を行う対象年齢は、中学生をメーンとした小学校高学年から高校生まで。より正しく理解するには、いろいろな知識があったほうが望ましいので、年齢はなるべく上のほうがよいと思っています。
授業の中では、まず子どもたちに、がんがどんなものなのかを教え、理解をしてもらうことから始めます。がんについてわからないと恐怖心が高まりますが、がんが治る確率は約6割、早期がんなら9割以上だということ、またがんは防げるということを教えると、授業の前は「怖い病気」というイメージだったのが、授業のあとは「がんは防げるんだ」「自分たちでコントロールできるんだ」と安心するようです。
最初に「がん教育」の授業を受ける子どもの中には、肉親をがんで亡くした子どもや小児がんの子どももいると思います。その子たちには、つらくなったら外で休んでもよいと言っていますし、できるだけ私がその子のそばに行ってケアをするようにしています。
保護者をがんで亡くした子で、「がん教育」の授業があると聞いて複雑な心境になった子どももいました。その子どもは、話を聞くのが怖いような気がしたけれど、でもやっぱり聞こうと思って授業に出たそうです。そうしたら、「がんがどんな病気なのかを知ることで恐怖心が消えて気持ちが楽になった。聞いてよかったと思った」と言うんです。「がん教育」には、がんという病気から子どもたちを守るだけではなく、周りの大切な人に対する気持ちを深めたり、恐怖に立ち向かう勇気を出したりするなど、さまざまな成長のチャンスがあると思います。
私は、せっかくがんのことを教えるのなら、がんのしくみや予防法だけではなく、命について、死についてまで考えてもらいたい、いじめや殺人などにも通じるようなことを教えたいと思っています。過去にも未来にも、一人として同じ人間は存在しません。これは本当に素晴らしいことです。だからこそ尊重し合う必要がある、限りある命を一生懸命生きなくてはいけない、「がん教育」はそういうメッセージにもつながると思っています。
出典:いのちの大切さを育む「がん教育」【後編】 -ベネッセ教育情報サイト
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