“一生懸命”スマホしている中学生

スマホ・ケータイを持つ中学生が男女とも6割を超えました。「中学生ニュース」第1回目は、スマホを片時も放そうとしない子どもたちにまつわる「SNS依存」の問題について兵庫県立大学の竹内和雄准教授にお話しいただきます。※2015年3月現在
(取材・文/長谷川美子)

お子さまのスマホ疲れ、大丈夫?

あなたが当てはまるものにチェックしてください。
□お子さまが今、誰と仲良しかなど、人間関係を知っている。
□「食事中はスマホをやらない」など、家族のルールがある。
□お子さまが、夜にスマホを自室に持ち込むのを禁止している。

いかがですか? 今、お子さまがスマホを持つご家庭では、多くの子どもがごはんを食べながらSNSをやり、おふろでもやっていて、スマホを手放しません。一方保護者の方も子どもといる時間に、LINEやゲームをやることもあるかもしれません。こうして家族の会話が少なくなると、保護者からお子さまの交友関係は見えなくなり、お子さまが朝までスマホをやっていても、何か問題に巻き込まれていても、気づけないことが増えています。

子どもたちがSNSに一生懸命な理由はさまざまですが、子どもたち自身からよく聞かれるのが、「夜、なかなか終われない」という言葉。LINEでのチャット(おしゃべり)は数人からクラスの30人ぐらいで行われる場合もあります。子どもたちは複数でやるチャットを"グルチャ(=グループチャット。複数が同時にやりとりできる)"と呼びます。毎日24時間スマホで友達とつながり、夜遅くまでグルチャできるのは楽しい一方、毎日だとしんどいことも。勉強時間がなくなることはもちろん、人間関係の気疲れや寝不足による不調を感じる子は、実は少なくありません。

もう1つ関連して、保護者が知っておきたい問題は、SNSがいじめのツールとしても使われていることです。リアル社会でのいじめがSNSで一気に広まるケースや、SNS上でのちょっとした言葉の誤解がいじめに発展するケース、巧妙な情報操作によって順番に誰かをグループから外すケースなど、外からは非常に見えにくいいじめも起きています。

子どもがスマホに依存する本当の理由

以上子どもたちの「スマホ依存」の問題についてお伝えしましたが、スマホ=悪として、一方的に禁止しても、効果がないばかりか、お子さまを窮地に追い込むことさえあります。子どもたちを上手に見守り、必要なときに適切なサポートをするためには、子どもたちがなぜこれほどまでにスマホから離れられないのか、実情を知ることです。子ども目線で、子ども社会の常識やルールを、大人が理解する必要があるのです。

スマホは「好きな子」と話せる
大切なツールの場合

保護者の方の中学時代は、学校で好きな子とたまたま廊下などで2人きりになったとき、「ねぇ」と話しかけることがドキドキの瞬間ではありませんでしたか? またお正月には「あの子から年賀状が来ているかどうか」がとても気になりませんでしたか? 子どもたちが毎日LINEを開く瞬間の気持ちは、そのドキドキと同じです。「クラスの○○くん、来てるかな~?」と、好きな子の書き込みをドキドキ探し、書き込みがあればその子とちょっと話したい。だから子どもにとって毎日SNSできることはものすごく大切なこと。お子さまのスマホ依存を考えるときには、そのあたりの事情も押さえておきたいものです。
例えば食事中、「肘つくのはダメ」と叱ればすぐやめるのに、LINEの場合、やめてくれないことが多いです。それは子どもがLINEというアプリがおもしろいから、やっているわけではなく、LINEの向こうの彼・彼女や友達とつながっていたいからなのです。

クラスで浮かないよう
必死にSNSを見ている場合

クラス替えのある4月は、クラスの多くが参加する、夜のグルチャが盛り上がる時期です。夜のグルチャでは、昼間学校でおとなしい子が「今日山田くんがこんな発言をしていたね~」など話題を仕切って存在感を出している場合もあります。
保護者の時代も、4月にはクラスのどのグループに入るか悩みませんでしたか? 今の時代もとくに女子はグループの問題に敏感です。だから4月はクラスの中で自分が浮かないように、ずっとクラスのグループの動向をLINEでチェックしている子もいます。とくにいじめに遭った経験のある子などは必死です。一年間自分がどこのグループに入るか、その子にとってはまさに死活問題なのです。もし、そういう理由でスマホ依存になっているお子さまから、保護者が無理やりスマホを取り上げると大変なことになってしまいます。本人は遊びだけではなく、保身のためにも必死なのです。

終わりたくても終われない
子どもたちの事情

子どもたちによると、グルチャでは「相手の発言で終わらせたくない」という気持ちが働くそうです。「おやすみ」と誰かが書いたら「おやすみ」と返さなければいけない。でもみんなが「おやすみ」と書いて寝ようとしたとき、「明日、体育いややなあ」と、新しい話題をふる子がいると、チャットはさらに続いてしまいます。もしクラスの30人ぐらいでしていたら、誰かしら夜中に元気な子がいるもので、その子の発言が終わるまで終われません。賢い子は、「お母さんが怒っているから~」とか、ある程度うまく対処できているようですが、ほとんどの子はできません。子どもたちはこうしたやりとりを、ときどき面倒だと思うことがあるようです。勉強しなきゃならないと思っている子はとくにそうです。でも友達の手前、言い出しにくい。「付き合い悪いな」とは言われたくないのです。
※神戸の調査データ ほんとは面倒くさいと思っている子

対策1
子どもを助ける「我が家のスマホのルール」

ルールは子どもと相談して決める

—本当はスマホを夜遅くまでやっていたくない。でも友達の手前、そんなこと言えない。そんなときは、「10時を過ぎて使っていたら、お母さんに取り上げられるんだ」などと友達に言えたら、いい言い訳になり、遅くまでやらずにすむきっかけになるでしょう。だからこそ、お子さまと家庭でのスマホのルールを決めることはオススメです。ただしルールを保護者の方が勝手に決めても効果は薄いです。お子さまが本音を言い、親も本音を言いながら決めることが必要です。例えば、「あんた、おもしろいのはわかるけど、遅くまでやっていると心配。お母さんは9時までに終わってほしい」と切り出します。するとお子さまは「9時なんてムリ、11時までだよ」などと返すでしょう。そしたらまたお互い話し合って、「なら10時にしようか」となります。
勝手に決められたルールなら子どもは反抗しますが、このやりとりがあれば、この1時間は子どもの勝ちとった1時間。だからこそ子どもも守ろうとするのです。
こうしたスマホのルールは、切り出すタイミングも大事です。LINEに夢中なときに言ってもまずスルーされるでしょう。いちばんいいのはスマホを初めて買い与えるタイミングです。すでに使っているお子さまの場合は、「受験生になったら」「夏休みになったら」など、節目のタイミングに前もって言うと効果的です。テストで悪い点を取ってショックを受けているときに相談に乗る形で切り出すのもいいでしょう。
そのとき配慮したいのは、子どもの人間関係。お子さまは、「今日から10時以降ダメなんだ」などと友達に急には言えないもの。前もって「オレ、8月になったら10時までなんだよ」など、友達に徐々に告知しておけるように、保護者が前々からお子さまに言っておくのがコツです。
こうして決めた家族のスマホのルールは、冷蔵庫など、見えるところに貼っておき、1週間ほどお試しで実行した後、現実的に難しかったルールを調整しましょう。例えば「塾の日は寝る前10分だけならいい。ただし返事は朝」など新ルールを加えるのです。こうして決めた現実的なルールなら子どももきっと納得します。


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   我が家のスマホのルール例

   ●時間
   ・夜10時まで。
   ・寝る前10分は可。ただし返事は翌朝。

   ●場所
   ・家族の食事の時間はスマホを触らない。
   ・親の話を聞くときにスマホに触らない。
 
   ●ペナルティ
   ・1日使用禁止(親が預かる)

   ●話し合い
   ・ルール変更したいときは、話し合って決める。
   ・特別な事情なときはルール違反してもいい。 
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対策2
いじめなど、デリケートな問題への対策

いじめの被害者になった子どもは、親や教師に相談しません。「言うとよけいややこしくなるから...」と口をそろえて言います。でもこれは「相談しなかった」というより「相談できなかった」のです。親が暴走して勝手に担任の先生に言いつけてしまい、その先生がさらに暴走して、「加害者は誰だ。太郎か?」と太郎に乗り込んで指導なんてされたら、その子の立場がありません。トラブルというのはだいたいこっちにもちょっと否があることが多いもの。暴走する親や教師には、危なくて「相談なんかできない」と子どもが思うのも当然です。
そうならないためには、親が暴走せずに、「どうするかは、必ずあなたと一緒に相談したうえで決める」と子どもと約束することが必要です。子どもの了解なしに、学校の先生に言ったりしない約束をするのです。そうすれば子どもも安心します。それは、ふだんから子どもに話しておくとさらによいでしょう。「何かつらいことや悲しいことがあったら相談してね。一緒に考えてどうするかは必ずあなたと相談して決めるから。絶対暴走したりしないからね」と伝えておきましょう。
もしこれは学校に相談しないといけない問題だと思ったときは、お子さまとよく相談して、どの先生になら相談してもいいかをまず聞きましょう。子どもには、「あの先生だったら言ってもいい」という先生がいるものです。それは担任とは限りません。保健室の先生だったり、教頭先生だったり。そこから相談していくとよいでしょう。
相談しても状況がよくならないこともあります。でも安心して保護者にすべてを相談できることが、子どもにとってどんなに心強いことでしょう。

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さて今回は一生懸命スマホをする子どもの実態とその対策方法を紹介しました。次回は、スマホを通じて犯罪に巻き込まれたり、ごくふつうの子が加害者になってしまったりする事件を取り上げ、その防止方法を紹介します。

(次号へつづく)

プロフィール


竹内和雄先生

兵庫県立大学環境人間学部准教授。公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。ウィーン大学客員研究員。

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