整形外科医が語る靴選び【前編】子どもの足の発達
子どもの足はとてもデリケート。合わない靴をはき続けていると、内反小趾(ないはんしょうし)などの足トラブルにつながります。今回は、子どもの足の構造について広く発信されている、整形外科医の内田俊彦先生に、子どもの靴の選び方について伺いました。
子どもの足は、軟骨が多くてやわらかい
まずは、子どもの足の発達について見てみましょう。画像は、2歳と11歳の子どもの足の骨格のX線画像です。
これを見ればわかるように、赤ちゃんの足は、かかとから足のまん中にかけての「足根骨」と呼ばれる部分のほとんどが軟骨です。特にくるぶしから下は、70%が軟骨です。
2歳
11歳
このように子どもの足はとてもやわらかく、軟骨は体の成長にしたがって、少しずつ骨へと形成されていきます。骨が全部そろうのが10歳ごろ、骨格ができあがるのが13歳ごろ、そして大人の足とほぼ同じになるのが18歳ごろとされています。
足トラブルや体のねじれは子どものうちに始まっている
そんなデリケートな子どもの足を守り、健全な足に形を整える「入れ物」が靴です。大切なのは、子どもの足に合った靴を選ぶことです。しかし、日本ではそれがなかなかできないのが現状です。
私は10年以上、主に幼稚園児の足の調査を行っていますが、園児293人のうち、70%が内反小趾(小指が親指側に曲がった状態)、4%が外反母趾(親指が小指側に曲がった状態)、47%が浮き指(指が底面に接地せず、浮いている状態)というデータが得られました。内反小趾や外反母趾は、大人になってから、痛い・歩きづらいなどの症状となって表れがちですが、実は子どものうちから始まっていることがあるのです。足トラブルにとどまらず、10代半ば以降の歯の噛み合わせや姿勢の悪さ、そして中年以降の腰痛や肩凝りなども同様です。
原因の一つは、発達段階に合っていない靴をはき続けることだと考えてよいでしょう。その結果、バランスが崩れやすくなったり、足指がうまく使えなくなったりして、内反小趾や浮き指が生じるのです。そして、このバランスの崩れをなんとか抑えようとして、無意識のうちに体のねじれが起きるという悪循環に陥っていく可能性があります。
脱ぎやすくてはきやすい靴がよい靴?
二足歩行は、体重をかかとで受ける→指で蹴って体重移動する→最後につま先で蹴り上げるという、一連の動きで成り立っています。その動きを妨げない靴をはくことが、足の変形といった足トラブルを防ぐのですが、日本では子どもの靴は、「脱ぎやすくてはきやすい」「ちょっと大きいくらいがちょうどよい」という感覚で選ばれています。
靴の先進国であるドイツでは、子どもの靴でもその多くが「ひも靴」です。これは、かかとが前後左右にずれないように、しっかりと固定されることが大切だからであり、ドイツの子どもは自宅で靴をゆっくりと時間をかけてはき、そのまま学校でもはき続けます。しかし日本では、学校の下駄箱で靴をはきかえることになっていて、さっと脱げることが優先されます。下校時もさっとはけることが、みんなのじゃまにならないので大切です。
本来の意味で、こういった靴は子どもの成長に合った靴ではありません。長じてのちの、足トラブルのもととなっているといっても過言ではありません。そんなトラブルの芽を摘むためにも、保護者が子どもに合った靴を知り、選ぶ目を持ちたいものです。