中学受験の意義を子どもに理解させる[中学受験]

中学受験に意義がないと思うのであれば、中学受験を行うべきではないと思うが、中学受験を否定しながら必要悪と考える保護者もいるようだ。遊びざかりの子どもに受験勉強をさせることが親としては忍びないようで、受験の相談会を行うと、「周囲の子どもが中学受験をしていて、我が子も塾に行きたいというので、塾に通わせているが、本当に小学生の頃から勉強ばかりさせても良いものか、考えてしまいます。いかがでしょうか」という相談が必ずと言って良いほどある。

その相談に対する答えとしては、
「中学受験を行うかどうかは、お子さんの成熟度とご家庭の教育方針によるところが大きいと思います。お子さんの成熟度とは、お子さんが受験に耐えられる肉体と精神を備えているかという意味で、小学生は成熟度の個人差が大きく、成熟度の遅い子どもに受験を強いることは避けるべきでしょう。また、ご家庭の教育方針が『子どもでも目標を持ち、目標を達成することを評価する』というものならば、もしも、第1志望校に合格できなかったとしても、その後の子どもの人生で中学受験から学んだことが生きると思いますが、子どもはのびのび育てたいというのであれば、受験は子どもが成長したあとの高校受験や大学受験で行っても良いと思います。小学校の4~6年生の大事な時期をどのように送らせたいかは親が子どものために考えてあげるべきでしょう。もちろん中学受験には、メリットとデメリットがあるわけですが、それをきちんと理解したうえでメリットがデメリットを上回って余りあれば、自信を持って中学受験に取り組めるはずです」
というようなケースバイケースの回答となる。

最も大事なことは、中学受験の意義を親が理解し納得したうえで、子どもにも同様に理解させ納得させることだ。小学生の子どもには、まだ理解できないことも多いかもしれないが、少しでも中学受験の意義を理解させてあげてほしい。子どもが精神的に未熟で中学受験の意義をほとんど理解できないようであれば、どんなに保護者が希望していても、また家の教育方針で中学受験が望ましい場合でも、子どもの成長を待って受験を考えるべきだろう。無理矢理に中学受験を強要しても子どもを「勉強嫌い」にするだけで、時間と金の浪費となるだけではなく、子どもを傷つけてしまうこともある。

すべてのことに言えるが、肯定する部分があれば否定する部分もあるのは当たり前のことだ。中学受験にデメリットがあることも十分わかったうえで、デメリットを上回って余りあるメリットがあるから中学受験を行うわけで、保護者が納得していなければ中学受験を行うべきではない。子どもに中学受験のメリットとデメリットの両方を話して、そのうえで、どうして中学受験を行うのかを理解させてからスタートしてもらいたい。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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