「あきらめずに頑張り抜く力」を芽生えさせるヒント

 ベネッセ教育総合研究所は2014年2月~3月に、全国の小学4年生~中学2年生の子どもとその保護者を対象に、『小中学生の学びに関する実態調査』を実施しました。この調査において、保護者が子どもに身につけてほしいと思う力の第1位は、「何事もあきらめずに頑張り抜く力」でした。

ベネッセ教育総合研究所顧問の深町芳弘先生が、その力を芽生えさせるヒントについて、お話します。

 

「失敗させたくない」と思う気持ちをこらえて

 中学生にもなれば、うまくいかないこともいっぱいあると思います。勉強、部活、友達関係などをはじめ、大きくなればなるほど、子どもの人生には壁が立ちはだかります。しかしそのたびに、保護者が先回りして「こうしなさい」と答えを教え、「教えたんだから頑張りなさい」と責めてしまっては、子どもの頑張り抜く力はなかなか身につきません。

 

したがって、子どもに失敗させないための先回り行動よりも、本人にかかわることはできるだけ本人に決断させ、その実現のための行動を継続的に励ましてあげることが、あきらめない心を育てるために、より大事なのではないでしょうか。

 

とはいえ、たとえば結果が出なかった時に、「あきらめないでよく頑張ったね」とほめるのは、とても難しいです。しかし、長い人生、第一志望を全部クリアできる人はほとんどいないでしょう。失敗を経験して、そこから学ぶこともたくさんありますし、大きな糧になります。小学生や中学生のうちは、人生を左右するほどの大きな失敗は経験していないと思いますが、高校受験からは失敗も糧にするという考えを持たせてあげてほしいです。

 

 

子どもは、受験をプラスに受け止めている

 ですから、仮に第一志望校に受からなくても、目標に向かって頑張れたことは存分にほめたうえ、「これからはどうすればよいか」を考えさせてあげればいいと思います。保護者が、子どもの結果ではなく過程を評価してあげることによって、子どもには挫折から立ち上がる気持ちが芽生えます。その気持ちこそ、将来の頑張り抜く力になるのではないでしょうか。

 

なお、ベネッセ教育開発センターが2011年9月、全国の高1生と母親に、高校受験に関する振り返り調査『高校受験調査』を実施しました。『高校受験調査』では、高校受験を経験した先輩たちが、「高校受験をしてよかったこと」について回答しています。特に多かった回答は、次のとおりです。

 

・進路についてよく考えることができた

・やればできると自信がついた

・今後の進路決定(大学受験など)に向けて頑張ろうと思った

・精神的に強くなった

・長い期間勉強をやりとげた達成感があった

・将来の目標ができた

・成績が伸びるのが面白かった

 

これらの答えから、高校受験は子どもたちに精神的な成長をうながしていることが分かります。特筆すべきことは、志望校に合格しなかった子どもも、このような回答をしているという事実です。

 

 

つまり高校受験を、合否の結果だけで評価すべきではないということです。子どもたちは、大人が思う以上に、受験をプラスに受け止めています。さらに、

・もっと勉強しておけばよかった

・実力相応の高校を受ければよかった

など、受験が終わった時に初めて気づくこともあり、やはり後々の人生の糧になります。

 

 

参考資料:

ベネッセ教育総合研究所『小中学生の学びに関する実態調査2014速報版』

http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=4340

 

ベネッセ教育開発センター『高校受験調査』(2011年)

http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3187

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