「だまされない大人」に育てるためにできること

2014(平成26)年12月、警察庁の発表では、振り込め詐欺の1~10月の被害額が約293億9,000万円に上り、過去最悪のペースで増えているとされています。
これほどテレビなどのメディアで取り上げられ、注意喚起を行っていても撲滅されるどころか増えるばかりなのはどうしてなのでしょうか。
振り込め詐欺は主に、息子をかたって電話をかけ高齢の親をだますという手口ですが、実は若者がだまされる詐欺的トラブル例も急激に増えています。



若者に多い詐欺的トラブル

子どもたちは19歳までは「未成年者」として法律で守られていますが、20歳の誕生日を迎えた途端、多くの危険にさらされます。

 【事例】

1.ネットの広告やSNSなどを通じて知り合った人の紹介などをきっかけに「簡単にもうかる」と勧誘されて契約したが、詐欺的な商法でまったくもうからない。
2. 幼なじみの友人から久しぶりに会おうと誘われたらネットワークビジネスの勧誘だった。
3. ワンクリック請求・架空請求に返信したり、電話をしてしまったりしたことからしつこくに高額請求を受けて支払ってしまった。
4. ネットショッピングで激安のブランド商品を注文して代金を振り込んだが、商品が届かない。
5.人の相談に乗るだけで報酬をもらえるというサイトが、実際は出会い系サイトだった。

若者がだまされる背景には
・だます側のテクニックが悪質化・巧妙化している
・ネット社会になって会ったことがない人との交流が多くなった
・リアルな人間関係が希薄になっている
・楽をしてお金を得たいという心理がある
・適切な金銭教育や消費者教育を受ける機会がなかった
などが考えられます。



広がるネット社会の影響

近年SNSによって知らない人同士が結びつく機会が増えました。若者の中には「知り合いのフォロワー」というだけで信頼できる人と感じる人がいます。「知り合い」はリアルな友人かもしれませんが、その「フォロワー」は見知らぬ人なのに、です。
リアルな友人であっても、ネットの中ではたくさん話しているけれど実際には長い間会っていないということも多く、困ったときに相談できる親しい友人が少ないことも若者がトラブルに遭いやすい要因です。



「楽をしてもうける」のが成功者?

親世代の中には、労働の対価として得られる所得以外に収入を増やす工夫をしてきた人たちも多くいることでしょう。いわゆる不労所得(不動産収入や資産運用などでの収入)を得ること自体は悪いことでも何でもありませんが、もしかしたら、知らず知らずのうちに社会全体で「楽をしてもうける人」のことを成功者のように、子どもたちに教えてきてしまった面もあるかもしれません。



商品の適正な価格を感じることが大切

あるマルチ商法では、150万円の商品を100万円に値引きすると勧誘して契約をさせる事例があります。勧誘された人は、その商品の適正な価格がわからないまま、50万円値引きされたら得をしたような気分にさせられて契約をしてしまうのです。

正価が1万円で販売されているブランドのスニーカーが、店舗では品切れで手に入らず、ブランドのネットショップにも在庫がないのに、一件だけ5,000円で販売しているネットショップがあった時に「ラッキー」と感じた人が注文をしてしまいます。多くの場合、偽物が届くか何も商品が届かないまま連絡が取れなくなってしまいます。

だます側のテクニックは今後も想像を超えて巧妙化するでしょう。
「この商品に100万円の価値があるのだろうか」「どこにも在庫がない商品が激安価格で販売されているのは怪しい」と敏感に感じられるように育てることが、将来「だまされない大人」を育てることです。

2014(平成26)年11月の「当コラム」で紹介しているように、労働の対価として賃金を得ること(お手伝い)、お店に行って欲しい物を買うこと(おこづかい)など日々の家庭の中の金銭教育がますます重要になるでしょう。

2012(平成24)年に消費者教育推進法が制定され、ようやく学校・大学・地域における消費者教育が推進されつつあります。学校と家庭が連携して「だまされない大人」を育てましょう。


プロフィール


宮里惠子

ファイナンシャル・プランナー、消費生活アドバイザー。生命保険をはじめ、教育費関連や住宅ローンについて雑誌・新聞・Webで執筆。地域に根をはるFPを目指して、横浜市北部エリアで活動している。若い世代に対する消費者教育の必要性を強く感じている。

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