どう教える? 金銭教育のポイント【第3回】中学・高校編

使う、稼ぐ、貯める……。日々の生活と切っても切り離せない「お金」。これから一生続いていくお金との付き合い方を、子どもにどう教えるべきでしょうか。第1回は幼児編、第2回は小学生編をご紹介しましたが、今回は、中学生・高校生時代の金銭教育について解説していきます。



世の中に甘い話はない!

思春期からは、ぜひ本格的に金銭教育をしていただきたいと思います。子ども同士で行動することも多くなるうえ、自我が形成され、保護者には言いたくないことが増えてくるため、お金に関するトラブルに巻き込まれやすくなるのです。女の子ならかわいい服や小物、男の子ならゲームやデジタル機器など、さまざまなものが欲しくなる時期。中・高生をターゲットにしたビジネスは発達しており、あの手この手で購買意欲をあおってきます。問題は、「欲しい」気持ちにつけ込む悪い大人がいることです。
ぜひ、「世の中に甘い話はない」ということをしっかり教えてあげてください。「簡単にお金が手に入る」といった話には絶対乗らない、欲しくもないものをすすめられたらきっぱり断るといったことは徹底すべきです。キャッチセールスをはじめ、町にはさまざまな怪しい商売があふれていますし、恋愛感情を利用していつの間にか高額なものを買わせる「デート商法」や、振り込め詐欺など犯罪の片棒を担がされるような危険なアルバイトもあります。誘惑に弱い人や断れない人が悪徳商法の絶好のターゲットとなることは、ぜひ強調しておいてください。



お金をめぐるトラブル、どう対処する?

保護者のお金を盗った、おつりをごまかした、カードを勝手に使った……など、お金をめぐるトラブルも、思春期によく起こります。
大切なのは、頭ごなしに叱らず、なぜそんなことをしたのか時間をかけて聞くことです。いじめにあっていて脅されているなど、やむにやまれぬ事情があるのかもしれません。そんな場合、子どもは「いじめられている」「不正を犯した」という二重のつらさの中にいます。子どもたちはたいてい「親に打ち明けたら絶対叱られる」と考えており、本当のことを話せなくなっています。きょうだいや友達の前で叱りつけるのは、本人のプライドを傷つけることになりますから、絶対に避けてください。保護者に話せないなら、本人が信頼している大人に話を聞いてもらうのもよいでしょう。

本人に悪いことをしている自覚がない場合は、「社会に出てこういうことをしたらあなたの信用がなくなるよ」「仕事を辞めさせられることもある。犯罪とみなされることもあるんだよ」といったことをきちんと教えてあげてください。大事なのは、社会に出て、自己責任が問われるようになったとき、本人がいかに適切に行動できるかです。

そのほか、お子さんのお金について、よくある悩みについてまとめてみました。

◆おこづかいのむだづかいが気になる
「安いから」と服や小物などをたくさん買い込むものの、ほとんど使わない。ゲームセンターなどで夢中になって遊んでいるうちに、何千円も使ってしまう……おこづかいのこんな使い方は、保護者として大いに気になると思います。しかし、むだづかいも経験のうち。「どうしてそんなことに使ったの!?」などと厳しく叱ってばかりいると、子どもはおこづかいの使い道を隠すようになるか、萎縮して経験する勇気をなくしてしまう可能性があります。お金の使い道について気軽に話題にできる関係を保てるとよいですね。
なお、安い金額でも、ねだられたら際限なく渡してしまうのはNGです。決められたおこづかいの範囲内での「むだづかい」経験ならば、決してむだではありません。

◆「教材や学用品を買う」と言って、別のことに使っているようだ
これは、前述のケースと同様、よく事情を聞く必要があります。子どもを傷つけずに本当のことを聞きだすコツは「答えやすいように尋ねる」ことです。「なぜ」「どうして」と理由を尋ねると「うるさいな」と拒否されがちなので、イエスかノーか、あるいは「何を」「いつ」「どこで」など一言で答えられる質問に。
たとえば……

「教材買った?」
「うん」
「どんな教材? 見せて」
「なくした」
「いつなくしたの?」
「……」
「本当は別のことに使ったの?」
「……うん」
「よかったらお母さんに話して。お父さんには内緒にしておくから」

まずはウソをついた理由や気持ちをしっかり聞いてあげることが大切です。叱る場合もくどくど言わないこと。なぜいけないかを、社会のルールに照らしてしっかり伝えてください。

◆友達にお金を貸しているようだ
お金の貸し借りは、友達をなくすことになるのでやめるべき。どうしても貸すなら、「あげる」と思って貸しなさいと伝えましょう。借金がいかに人間関係や社会生活を難しくするかは、大人の世界にいくらでも事例が転がっています。身近に借金や連帯保証人の問題で困った経験のある人がいれば、わかるように話してあげるのもよいと思います。



お金との関わりは、自分と社会との関わり

「お金」は、社会とつながっています。思春期は、大人の世界に関心が向く時期。お金の意味を、社会との関係の中でつかんでいってほしいですね。今、目の前にあるおこづかいは、ただ欲しいものを買うための道具ではなく、保護者が苦労して稼いだものであること。そのお金を配分しあって、家族みんなが生活できていること。そして、自分も将来は社会に出て仕事をし、生活費を得なければならないこと……。
こういったことは、日々、子どもが保護者の後ろ姿を見ながら自然に学んでいくものだと思います。保護者のかたが、お仕事や家計について、さまざまなエピソードを交えて話してあげるのもよいですね。
また、今まで触れたようなお金のトラブルは、額は小さくても社会で起きているさまざまな事件とつながっています。お年玉の配分をめぐるきょうだいげんかと、相続をめぐる骨肉の争いの根は同じなのです。将来、深刻な問題に巻き込まれるのを避けるためにも、今お金としっかり向き合っておくのは必要なことです。

思春期の子どもたちに、最も知ってほしいのは「生きたお金の使い方」です。自分が本当にやりたいことは何か。それを実現するためには、どんなことを学び、何に時間を使うべきか……そんなことを考え始めるのにふさわしい時期です。夢や、自分らしい暮らしを実現するためのお金の生かし方について、話し合う時間を持っていただければ幸いです。


プロフィール


山本節子

専業主婦の時代、15回の不動産売買の経験をキッカケに、FPや日本証券アナリスト検定会員補の資格を取得。現在は買い手の立場に立った相談業務、セミナー講師、雑誌や書籍の執筆などを行う。(株)リスタート代表。

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