大学の「科研費」って何? 研究力の指標、大学選びの参考にも-斎藤剛史-

科学研究費助成事業、通称「科研費」と言われる補助金をご存じでしょうか。大学や研究機関の研究者、研究グループの科学研究を国が支援するための補助金で、自然科学から人文・社会科学まで、すべての分野の科学研究を支える根幹的な制度です。一般の受験生やその保護者には無縁のように見えるかもしれません。しかし、文部科学省が発表した2014(平成26)年度「科研費配分状況」を見ると、将来の大学選びの参考になるようなデータを得ることもできそうです。

大学の「科研費」って何? 研究力の指標、大学選びの参考にも-斎藤剛史-


科研費は、2014(平成26)年度文科省予算の中に総額2,276億円が計上されており、名実ともに日本の科学研究を支える制度です。また、科研費の採択・配分は日本学術振興会などの審査を経て決定されることになっており、このような補助金は「競争的資金」と呼ばれます。各大学は、少しでも多くの競争的資金を得るため、科研費の採択件数や配分額を競っているわけです。文科省が発表した2014(平成26)年度の科研費交付状況(配分総額1,644億円)によると、科研費の応募件数は10万462件、そのうち新規採択件数は2万6,714件で、採択率は26.6%でした。この厳しい採択率を見てもわかるように、科研費の採択件数などが多いほどレベルが高い研究者が集まっている大学ということになります。
また、今年度の発表資料の大きな特徴は、大学などを採択件数の多い順に一覧化していることです。これまでも大学別に採択件数・配分額などは公表されていましたが、大学間の比較が簡単にできないようになっていました。これをランキングの形に変更したのは、科研費の実態の可視化を高めて、その資料を活用できるようにする狙いからです。

科研費採択件数(新規+継続)のトップは東京大学の3,690件で、7位までを旧帝大系大学が占め、8位は筑波大学、9位は広島大学、10位は神戸大学でした。私立大学は11位に慶応義塾大学、12位に早稲田大学、続いて22位に日本大学が入っています。一覧では、研究者の女性比率や若手比率も載っており、女性や若手の研究者が活躍している大学かどうかも知ることができます。研究力という面から大学を見ると、また違った視点での大学選びができるのではないでしょうか。
さらに、今回から300以上の研究分野にわたる科研費採択件数(過去5年分)のトップ10を公表しているのもポイントです。ここでもやはり旧帝大系が強みを見せていますが、中には「日本文学」と「中国文学」の1位が早稲田大学であるなど得意な研究分野がある私立大学がわかるほか、「食生活学」は静岡県立大学、「寄生虫学」は長崎大学がそれぞれトップに立つなど、地方の国公立大学が意外な強みを持っていることもわかります。

ただし、これらはあくまで科研費という面から大学の研究力を見たもので、大学の教育力などを評価したものではありませんので、その点は注意が必要です。それでも興味・関心がある研究分野などがある受験生にとっては、大学選びの参考とすることができるのではないでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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