幼児期の食事のお悩み解決します!【後編】子どもの好き嫌いへの対応

幼児期になると、離乳食では問題なく食べていた野菜を急に食べなくなるなど、好き嫌いがよりはっきりと現れてくるため、毎日の食事作りに悩む保護者のかたもいらっしゃると思います。そこで、前回に引き続き、管理栄養士の太田百合子先生に好き嫌いの対応についてお聞きしました。



幼児期の食事のお悩み解決します!【後編】子どもの好き嫌いへの対応


子どもの好き嫌いについて

食べ物の好き嫌いが現れるのは2~3歳くらいから。味覚が発達すること、自我が芽生えて自己主張が強まることなどが要因と考えられます。つまり、好き嫌いの現れは決して、悪いことではないのです。ただ、食べてくれなくても諦めずに、料理法などを工夫して、大人がおいしそうに食べる様子を見せましょう。いつか「自分も食べてみたい」という気持ちがわいてくるはずです。
また、スーパーで食材を選ばせたり、料理やおやつの手伝いをさせたり一緒に作ったりすることで、食べ物に親しみがわいてきます。自分が関われば少しずつ、苦手食材にチャレンジしてみようという気持ちになるかもしれません。そうした楽しい経験を積み重ね、食べる楽しさを伝えてほしいですね。



太田先生に聞きました 幼児期の食事のお悩み Q&A

【嫌いな食材はだましてでも、食べさせるべき?】
Q.
ニンジンが嫌いなのですが、すり下ろしてハンバーグなどに混ぜて食べさせようとしますが、うまくいきません。どうしたらよいでしょうか?

A. 幼児期以降は、苦手な食材を好きな料理に混ぜてだまして食べさせるのは、おすすめできません。子どもは「好きなカレーにもニンジンが入っているかも」と疑心暗鬼になってしまい、食事そのものが嫌いになってしまう可能性があるからです。それよりも、保護者がお子さまの嫌いな食事をおいしそうに食べる姿を見せるほうが効果的です。時間はかかるかもしれませんが、いつか「パパやママがおいしそうに食べているから、食べてみようかな」と思えるようになります。また、嫌いな食材だとわかったうえでも子どもが食べられるよう、大人用より軟らかく煮たり、切り方を工夫したり、苦みやえぐみを和らげるよう調味料を使ったりするなどの工夫をしてあげるとよいですね。

【好きなものばかり食べる場合は?】
Q.
白いご飯が大好きで、いつもご飯ばかりを食べてしまいます。野菜をもっと食べてほしいのですが。

A. 幼児期は、自分なりの食のこだわりができる時期でもあります。食事の最初はお腹が空いていると思うので、野菜入り味噌汁やおかずを先に出してみましょう。お腹が空いていればおいしく食べられます。野菜料理は、ごまあえ・炒め煮・卵とじ・てんぷら、シチューなど料理法を工夫してみましょう。それよりも、大人の期待がプレッシャーにならないようにして、子どもの「食べたい」という意欲を大切にしてあげてください。子どもの好みは移り変わるのでそれほど心配しなくてもよいと思います。

【食べるペースが遅すぎる・早すぎる場合は?】
Q.
毎朝、食事を食べるのが遅くて困っています。

A. 食べるのが遅くてなぜ困っているのかにもよるのですが、園の時間に間に合わないというのであれば、余裕をもって少し早く起きるのも一つの方法かもしれません。少食なら、ごく少量を盛り付けて子どもの食欲に合わせたり、おにぎりやサンドイッチ、お好み焼きなど簡単に食べやすい形にしてあげたりするとよいでしょう。
また、「早く食べなさい」と口うるさく注意せずに、早く食べるとどんなよいことがあるのか(早く食事を終えたら早く公園で遊べる、早くお友達に会えるなど)を示してあげるのがよいと思います。

Q. 食べるのが早すぎるのが心配です。よくかむようにと言っても本人には伝わっていません。

A. かみ応えのあるメニューを増やしましょう。意識的に前歯を使わせるメニュー、たとえばスティック野菜などを用意してあげるとよいと思います。かみ応えのある食材は、根菜類(ごぼう・レンコン・大根など)やいも類、イカ、えび、ホタテ、大豆、きのこなどです。これらを、加熱時間を調節してかたさを残すなどして、よくかめるように工夫しましょう。皿数も大切で、一汁ニ(三)菜のように食感の違う料理をそろえます。また、食事中に水やお茶を用意すると食べ物を流し込んでしまうので、水分は具材のあるスープやお味噌汁とし、よくかむことで唾液(だえき)と混ぜ合わせて食べられるようにしましょう。食事中は会話をしながら食べるとよくかみます。

◎保護者へのメッセージ
小学生以降になると塾や習い事で忙しくなり、一緒に料理作りを楽しむ時間もだんだん減ってきます。だからこそ、ぜひ幼児期から「食べるって、楽しいな!」と思えるような経験をさせてほしいですね。鉄板焼きやお鍋パーティーをする、手作りお菓子に挑戦するなど、どんなことでも構いません。幼児期の食に関する楽しい思い出は、大人になったときにも食を考えるうえで大切な原点となるはずです。


プロフィール


太田百合子

東京・こどもの城で長きにわたり乳幼児の栄養指導を行う。現在は東洋大学などの非常勤講師、指導者や保護者向け講習会講師、NHK子育て番組出演や育児雑誌などの監修を務めている。「ひよこクラブ」の離乳食特集の監修も多い。日本小児保健協会栄養委員・学校保健委員、日本食育学会代議員、東京都小児保健協会理事。モットーは「わかりやすい栄養相談」、研究テーマは小児肥満、離乳食、幼児食。

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