プログラミングは誰もが当事者。保護者が知っておくべき最低限のことって?
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社会の急激な変化に伴い、プログラミング教育の注目度が高まる昨今。2025年度の大学入学共通テストでは、プログラミングの内容を含む教科『情報Ⅰ』が追加されます。
とはいえ「うちの子はエンジニアを目指したいわけではないし……」「そもそも親がわからないから、学ばせるべきか悩む」というかたもいらっしゃるかもしれません。
保護者の時代にはなかったからこそ、気になりつつもそのままになりがちなプログラミングへの向き合い方、始め方について、プログラミング教育に携わる中村忠智さんに聞きました。
プログラミングは誰もが当事者。キャリアパスも自在に
プログラミングを学ぶメリットの1つが、「プログラミング的思考」を身に付けられる点です。
「プログラミング的思考」とは、意図する結果を導くために、状況や条件を理解し、論理的に考える力のこと。プログラミング的思考を磨くことで、未知の社会で未知の課題に出合ったとしても、論理的にアプローチし、トライアンドエラーを重ねながら粘り強く解決していく思考と姿勢が養われます。
今の子どもたちが社会に出るころには、現代には存在しないテクノロジーが出てきていることでしょう。私たち保護者世代の多くが社会に出たころ、スマホもAIもなかったのと同じです。どんな社会になっているかは、想像がつかない。
だからこそ、未知の社会・未知の課題に出合ったときに、解決していく姿勢を身に付けることが大事なのです。
プログラミング的思考は、プログラミングをとおして学ぶのが一番です。プログラミングとは、コンピュータにさせたい処理を順序立てて指示すること。コンピュータが発達した昨今では「読み書きそろばんプログラミング」と言われるほどになっています。高度なスキルを備えることは一部の職種にのみ限られるものの、基本スキルを兼ね備えていることは、どんな職種や業種にも求められます。
キャリア形成や進学、就職の現場も変化。高いプログラミングスキルを持つ人材は、たとえ新卒や若手でも引く手あまたで高い年収レンジに。大学で学んでいなくとも、グローバル企業からヘッドハンティングされる例もあります。
IT専門職以外でもプログラミングスキルは、キャリア形成の重要な要素になっています。たとえばマーケティング職では、プログラミング的思考をベースにデータ管理や分析のスキルを求められます。経理職などでも表計算ソフトでマクロを組むなどして生産性を高めることが求められます。
どんな業種や職種であれ、競争力を高めるためにDX(デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を活用して社会や生活の在り方を変革すること)とは無縁でいられません。農業や漁業など一見、デジタルとは関係がなさそうな業種においても同様です。
このような状況を受け、大学生の学びも変化しています。たとえ文系学科であっても、自分の専門分野の勉強と並行して、プログラミングやAIを学ぶ学生が増加。「自分の専門×プログラミング」はスタンダードになりつつあります。
現状のプログラミング教育に足りないもの
プログラミング教育は、小学校・中学校・高校で行われています。また、学校以外でもプログラミング教室や教材が多数。さまざまな工夫がされてはいますが、まだまだ不十分な点もあるのが現状です。
たとえば、学校のプログラミング教育は学校ごとの取り組みに差異が大きいことが挙げられます。小学校から地球と月と太陽の回転周期を「Scratch(スクラッチ。教育プログラミング言語)」で組んでいる学校もあれば、タイピングもままならない子どもが多いという学校もあります。プログラミングは、月に1回程度の授業という学校も多く、パソコンへの慣れや興味で個人差も大きくなっているようです。
一方、学校以外でのプログラミング教育では、楽しさを追求するあまりプログラミングの入り口部分だけで終わってしまっているものも。興味を持たせるために楽しさは欠かせませんが、やることや想定されるミスとその対応さえもあらかじめ準備されていては、ゼロから思考と失敗を重ねて粘り強く取り組むという「本当の意味でのプログラミング体験」をするのは難しいでしょう。
プログラミング教育で大事なのは「失敗と最新技術に触れること」
では、これからのプログラミング教育には何が求められるのでしょうか。私は、「複雑ではなく、簡単でシンプルに組み立てる設計力」「ゼロから作品を作り上げ、失敗やうまくいかない点から学ぶ体験」「最新の技術・テクノロジーに触れる体験」の3つであると考えます。
1:複雑ではなく、簡単でシンプルに組み立てる設計力
プログラミングというと、複雑な設計をしなければいけないと思われがちですが、実は全く逆です。なるべく簡単に、シンプルに組み立てることが求められます。
その理由は、シンプルであるほうがミスが起きにくく動作も軽くなること、また他の人から見ても意図が読み取りやすく、再現性を高めることができるためです。
たとえば、同じ動きが3回続く場合には、同じ指示を3回並べるのではなく、「3回繰り返す」と設計したほうがシンプル。複雑な機能を、簡単な機能の組み合わせに落とし込むということは、本質がわかっていないとできないものです。この複雑なことも本質を見極め、シンプルに分解し、考え、解決を目指す力は、プログラミングのみならず、勉強や社会で出合うあらゆる課題の解決に役立つ力となるでしょう。
2:ゼロから作品を作り上げ、失敗やうまくいかない点から学ぶ体験
本当の意味でプログラミングスキル、プログラミング的思考を身に付けようと思ったら「一機能だけ作る」といったお試しや、あらかじめ準備された教材に取り組む以上に大事なことがあります。
それは、ゼロから自分の構想を形にしてみる、失敗や壁を1つずつ乗り越えて試行錯誤から学ぶということ。人は失敗から一番学びます。
そして、プログラミングには失敗がつきもの。想定どおりに動かないなんてことはザラです。その原因を見極め、仮説を立て、プログラムを組み直していく試行錯誤のプロセスこそが、社会で活躍できる、ホンモノの力となっていくのです。
失敗をトライアンドエラーでリカバリする力が身に付けば、どんな状況にも役立つ力となるはずです。「どんどん失敗しておいで」と言えるのも、プログラミングのいいところといえるかもしれません。
3:最新の技術・テクノロジーに触れる体験
技術やテクノロジーは日々刻々とアップデートされていきます。突然、新しいテクノロジーが生まれることもあるでしょう。そんな社会で大切なのは、わからないなりにも、最新のテクノロジーに触れてみて、いち早く適応していく行動スタイル。
だからこそ、子どもであれ最新の技術に触れておくことが重要です。
プログラミング教室や教材を選ぶ3つの視点
プログラミング教育に興味を持っても、教材や教室が多すぎて選べない……ということもありますよね。保護者のかた自身にプログラミングの経験がないという場合はなおさらでしょう。
興味を持ち続けるために、お子さまの「楽しい」は大前提。さらに保護者のかたが「体験にとどまらず、本質的な力を付けていけるか?」を見極められると、より将来への力となります。
ぜひ、次の3点に注目してみてくださいね。
- カリキュラムがあり、成長イメージが示されている
- タブレットだけでなくパソコンで取り組める
- 子どもに寄り添った指導ができる講師
プログラミング体験で終わるか、プログラミングスキルを身に付けられるかについては短期だけでなく中長期で「カリキュラム」と「身に付く力」が設計されているかで判断できます。
ロボット教材を使った「ロボットプログラミング」や、Scratch、MOONBlockのような「ビジュアルプログラミング」を入り口として、その後、どんなカリキュラムが想定されているかをチェックしてみましょう。成長イメージを具体的に示してくれるところであれば安心です。
学校でタブレットが配布されていることもあり、タブレットの使い方には慣れている子どもも多いですが、まだまだ職場の環境はパソコンが主流。複雑な作業は、タブレットでは難しい部分もあります。パソコンの使用に慣れるためにも、パソコンで取り組めるものをおすすめします。パソコンは子どもであればすぐ慣れます。むしろ、あっという間に保護者のかたを追い越していくかもしれません。
プログラミングは、設計に悩んだり、うまく動かなかったりと壁にぶつかることが多いものです。粘り強く試行錯誤して解決していくには、伴走してくれる講師の存在が欠かせません。子どもの特性に合わせて、ゲーム性を持たせたり、一緒に寄り添って考えたり、子どもの作ったゲームで本気で遊べたり……子ども目線に立てる講師がいれば、粘り強く取り組む支えになるはずです。
まとめ & 実践 TIPS
プログラミングを学ぶことで、プログラミングスキルが伸びるのに加えて、どんな課題に出合っても対応していく姿勢も学べます。本質的な力であるからこそ、プログラミング教育が気になったときには、「楽しい」に加えて、本質的な教室や教材かどうか? をぜひ検討してみてくださいね。
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