大学教育再生加速プログラムに46件を選定 双方向授業など推進-斎藤剛史-

以前の当コーナーで、文部科学省が公募する「スーパーグローバル大学」と「大学教育再生加速プログラム」に各大学から応募が殺到していることを紹介しました。このうち、大学改革を推進するための大学教育再生加速プログラム事業に46件が選定されることが決まりました。

大学教育再生加速プログラムは、政府による「教育再生」に全学的に取り組む大学を支援し、その成果を全国に広げていこうというものです。事業テーマは5区分で、一方通行の講義による授業から双方向授業へと能動的な授業を目指す「アクティブ・ラーニング」には94件が申請して徳島大学など9件が選ばれたほか、各種指標を活用して学生の学修成果を把握しながら教育体制の改革を図る「学修成果の可視化」には41件が申請して横浜国立大学など8件が選定、これら2つのテーマを合わせた「複合型」には88件が申請し、宇都宮大学など21件が選ばれました。また、意欲・能力・適性などを多面的に評価する大学入試改革のための「入試改革」は8件が申請してお茶の水女子大学など3件が、同じく高校と大学が連携して教育の質を高めるための「高大接続」には19件が申請して愛媛大学など5件がそれぞれ選ばれました。
申請は計254校250件のうち審査を経て選ばれたのは47校(大学39校、短大4校、高等専門学校4校)。ただし、複数校による共同申請があるため集計上は46件、採択率は18.4%となります。同プログラムのテーマからは、学生が能動的に学び論理的思考力や表現力などを身に付けていくアクティブ・ラーニングへの授業改革、学修成果を明確に示すことで大学教育の質の向上を図る学修成果の可視化、画一的なペーパーテストから多面的・複合的な選抜に転換する入試改革などが、現在、政府や文科省が進めようとしている教育再生の方向であることがわかります。

選定校を見ると、これまでの文科省の公募事業と異なり、国立大学より私立大学が多く選ばれているほか、有名大学や大規模大学よりも中堅大学や中規模大学が多く選ばれているようです。主要大学や大規模大学はスーパーグローバル大学の応募に回ったこと、全学的な取り組みを重視したことから規模のあまり大きくない大学が有利だったことなどが理由として挙げられそうです。さらに、日本の大学の大半を占める私立大学や中規模大学で教育改革を推進することで大学全体への効果の波及を狙ったとの見方もできます。
具体的な中身としては、たとえばアクティブ・ラーニングで、徳島大学は教育改革推進センターを中心にして全学的な導入を進めようとしているほか、立正大学ではタブレットPCを利用した双方向授業の実施を予定しています。入試改革では、模擬授業を受けてレポートを書くといったお茶の水女子大学の「新型AO入試」、国際的大学入学資格の成績だけで選抜する岡山大学の「国際バカロレア入試」などがあります。

文科省の肝煎りで開始された同プログラムが今後、全国の大学にどのような影響を及ぼすかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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