学校統廃合は首長の意向を重視へ 教育委員会改革で変化-斎藤剛史-

教育委員会制度の見直しを定めた改正地方教育行政法が2014(平成26)年6月に成立し、2015(平成27)年度から施行されることになりました。教育行政における市町村長など首長の権限の強化などがポイントとなっていますが、子どもたちや保護者、各学校の教育現場にとって、教委制度の見直しは実際にどのような影響を受けることになるのでしょうか。

一般的には「教育委員会」と呼ばれるものには、教育行政担当部署である教育委員会事務局(広義の教委)と、教育委員による合議体である教育委員会(狭義の教委)の二つがあります。今回の法改正は、教育委員による狭義の教委の改革が狙いです。大きな改正点は、首長と教育委員による「総合教育会議」(主宰者は首長)を設け、そこで教育行政に関する「総合的な施策の大綱」を策定したり、教育に関する問題を協議・調整したりすることで、「民意の代表者」としての首長の意向を教育行政により反映させるようにしたことです。文部科学省は通知の中で、大綱の記載内容を「学校の耐震化、学校の統廃合、少人数教育の推進、総合的な放課後対策、幼稚園・保育所・認定子ども園を通じた幼児教育・保育の充実」などと例示しており、具体的な学校運営などは教育委員による教委の所管であり首長の権限は及ばないとしています。また、首長と教育委員の間で調整がつかなかった事項が仮に大綱に盛り込まれても、教育委員による教委はその事項を尊重する義務を負わないとしており、教育行政の政治的中立性に配慮しています。

しかし、学校統廃合、学童保育などの放課後対策、幼稚園・保育所などの幼児教育などが大綱に定める事項として例示され、首長の影響下に置かれるようになることは、保護者や子どもたちにも関係してきそうです。特に学校統廃合などは今後、首長の意向に大きく左右される可能性があります。地域住民・保護者にも関心が高い問題だけに、市町村長選挙では学校統廃合への対応などが争点の一つになるかもしれません。
また文科省通知は、市町村において全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校別成績の公開の是非も大綱に記載できるとしています。一応、教育委員の合意が前提となっていますが、首長の影響力が増すのは避けられないでしょう。さらに政治的中立性の観点から教科書採択などは総合教育会議の議題にできないものの、教科書採択方針などの大枠は「協議することは考えられる」(文科省通知)とされています。歴史や公民などの教科書をめぐる首長の姿勢次第では論議を呼ぶことも懸念されます。
このほか文科省通知は、いじめ問題による子どもの自殺、通学路での交通事故、居所不明な児童生徒への対応などの問題が発生した場合、首長と教育委員による総合教育会議を開催するよう求めています。

今後、市町村長など首長が政治的中立性とのバランスを取りながら、学校統廃合やいじめ問題などの教育行政に影響力を行使していくのかが注目されます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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