教育再生が求める「スーパーグローバル大学」って何? ‐斎藤剛史‐

安倍晋三首相が進める「教育再生」は、グローバル化に対応するため大学教育の改革などを大きな柱の一つとしています。この実現に向けて文部科学省は、改革のモデル校となる大学を公募する「スーパーグローバル大学創成支援」と、「大学教育再生加速プログラム」の二つの事業を始めました。公募の審査項目などからは、これから大学をどのように変えていこうとしているのか、文科省の狙いがうかがえます。いったい「教育再生」は、大学にどんな改革を求めているのでしょうか。

政府は、2013(平成25)6月に策定した「日本再興戦略」の中で、今後10年間で世界トップ100大学に日本の大学を10校以上入れるという目標を掲げました。現在、英国の教育専門誌による世界大学ランキングで100位以内に入っているのは東京大学(23位)と京都大学(52位)の2校だけですから、この目標がいかに困難なものかがわかると思います。このため文科省は「スーパーグローバル大学創成支援」を始めました。公募しているのは、世界大学ランキング100位以内を目指す「トップ型」10校、社会のグローバル化を牽引(けんいん)する「グローバル化牽引型」が20校。審査に通れば、トップ型で5億円、グローバル化牽引型で2~3億円の補助金が最大10年間受けられます。公募の審査基準を見ると、教員と学生の外国人の割合、日本人学生の海外留学経験者の割合、外国語による授業科目や外国語のみで卒業できるコースの割合などのほか、大学入試においてTOEFLなど英語能力試験を活用しているかなどが問われています。トップ大学に文科省が求めているのは、このようなグローバル化対応だといえるでしょう。

一方、「大学教育再生加速プログラム」では、単なる講義でなく学生の能動的な活動を取り入れた授業を実施する(1)「アクティブ・ラーニング」(8校)、学生が学んだ成果を客観的に評価できるようにする(2)「学修成果の可視化」(8校)、(1)と(2)を併せた(3)「複合型」(16校)、そして大学入試改革や高校教育との連携に取り組む(4)「入試改革・高大接続」(入試8校、高大接続4校)の内容を公募しています。採用されれば、約2,000万円の補助金を最大5年間受けることができます。
両プログラムで特に注目されるのは、公募の申請要件として成績が一定以下なら落第させるなどの「厳格な成績評価」(GPA)が実施されているかどうかが挙げられている点です。これからの大学改革の大きなポイントになると予想されます。

このほか両プログラムでは、大学入試改革として「多面的・総合的に評価・判定する」大学入学者選抜の実施や取り組みが申請要件となっています。現在、1点刻みの点数を争う入試から論理的思考力など多様な能力を評価する入試への転換が、中央教育審議会で論議されています。審査に通った大学は、これからの大学入試改革のモデル校となることは間違いないでしょう。これら二つの事業の採択校は、2014(平成26)年9月に決定される予定です。どんな大学がどんな取り組みをするかが注目されます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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