振り込め詐欺で少年検挙者数が急増 5年で6倍以上に‐斎藤剛史‐

少年による犯罪自体は減っている一方、いじめに起因する事件は依然として高水準で推移しているなど、少年非行は気が抜けない問題です。警察庁がまとめた2014(平成26)年度上半期(1~6月)の少年非行の調査によると、最近の特徴として新たな問題が浮き上がってきました。振り込め詐欺による少年の検挙者の急増と、犯罪被害者となる子どもの低年齢化です。

警察庁のまとめによると、2014(平成26)年上半期に刑法犯として検挙された少年(20歳未満)は2万3,103人(前年同期比14.2%減)で、12年連続して減少しています。また、同年代の人口1,000人当たりの検挙者数は3.2人(同0.5人減)で、こちらも10年間連続の減少となっています。殺人や強盗などの凶悪犯の検挙者は338人(同6.9%減)でほぼ横ばい傾向にあるなどの課題はあるものの、全体として少年による犯罪は減少していると言ってよいでしょう。

しかし、そのような中で検挙者が急増しているのが「振り込め詐欺」です。統計を取り始めた2009(平成21)年からの検挙者の推移を見ると、いずれも上半期だけで09(同21)年が22人、10(同22)年が13人、11(同23)年が44人、12(同24)年が59人、13(同25)年が111人、14(同26)年が137人となっています。2014(平成26)年上半期は、09(同21)年上半期の6.2倍にも上る計算です。詐欺などの知能犯全体の少年の上半期検挙者数は、2010(平成22)年以降ほぼ横ばい傾向にあるため、よけいに振り込め詐欺の検挙者数の急増が目立ちます。
警察庁が挙げた事例によると、氏名不詳の者と共謀した男子中学生(15)が息子を装って男性(87)宅に電話をかけ、「扁桃腺(へんとうせん)が悪くて病院に来た。受付している間に鞄(かばん)を盗まれた」などと嘘を言って現金を受け取ろうとしたケースなどがあり、主犯の指示を受けて電話をかけたり、「受け子」と呼ばれる現金の受け取り役として関わっていたりするケースが多くを占めているようです。まるでゲームであるかのように、振り込め詐欺に安易に加担する子どもたちの姿がうかがえます。凶悪犯・粗暴犯などの刑法犯罪のほか、万引きなどの初発型非行も減少傾向、あるいは横ばい傾向にある中で、ゲーム感覚で「振り込め詐欺」への加担などが急増していることは、現在の子どもたちの抱える問題の一端を表していると言ってもよいでしょう。

このほか、2014(平成26)年上半期に少年が刑法犯罪の被害にあったと警察が認知したのは8万4,641件(前年同期比2.9%減)で、ほぼ横ばいとなっています。このうち、強姦(ごうかん)や強制わいせつなどの性犯罪の被害件数は2,003件(同4.0%減)で、上半期としては3年連続して2,000件を上回っています。また犯罪被害者全体を年齢層別に見ると、「0~5歳」が209件(同19件増)、「6~12歳」が1万1,751件(同246件増)、「13~19歳」が7万2,681件(同2,835件減)となっています。少年の犯罪被害は全体で見ればほぼ横ばいであるものの、12歳以下の子ども、特に小学生の犯罪被害が増加していることが注目されます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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