減少する少年犯罪 刑法犯検挙者は戦後最低に‐斎藤剛史‐

少年による犯罪がマスコミで報道されるたびに、少年犯罪の増加・凶悪化などが話題になります。しかし、警察庁のまとめ(外部のPDFにリンク)によると、2013(平成25)年中における少年による犯罪の検挙・補導者数は戦後最低を記録したことがわかりました。少年犯罪は確実に減少しているようです。一方、中学生による性犯罪が1987(昭和62)年以降で最多となり性犯罪の低年齢化が懸念されるほか、振り込め詐欺による検挙者も統計を取り始めた2009(平成21)年以降で最多となっています。

警察庁によると、2013(平成25)年中に刑法に該当する犯罪で検挙された刑法犯少年(14歳以上20歳未満)は、前年より13.7%少ない5万6,469人で戦後最低を更新しました。同年齢層人口1,000人当たりの刑法犯少年の検挙・補導数は7.8人で、最近のピークだった2003(平成15)年に17.5人を記録して以降、ほぼ一貫して減少を続けています。このうち殺人や強盗などの「凶悪犯」は前年度より50人減の786人で、最近は「下げ止まり傾向」(警察庁)にあるものの、それでも減少していることに変わりはありません。少年犯罪は増加している、あるいは凶悪化しているというイメージは、間違いであると言ってよいでしょう。さらに、万引きなど犯罪の入口とも言われる初発型非行も過去10年間ほぼ一貫して減少しています。

その一方で気になるのが、少年による「性犯罪」(強姦<ごうかん>および強制わいせつ)の増加です。性犯罪による検挙者は2006(平成18)年の348人から増加傾向に転じ、13(同25)年は456人でした。特に、刑法で処罰されない14歳未満の者を含めた中学生の検挙・補導者は2006(平成18)年に171人だったものが13(同25)年には294人となり、警察庁では1987(昭和62)年以降で「最多となった」と性犯罪の低年齢化を警戒しています。また、詐欺や偽造など「知能犯」による検挙者も全体では減少傾向にあるものの、「振り込め詐欺」による検挙者は前年比102人増の262人で、統計を取り始めた2009(平成21)年の33人に対して約8倍に増えています。凶悪犯罪の「下げ止まり」などの指摘はあるものの、全体として少年犯罪が減少する中で、性犯罪や振り込め詐欺による検挙・補導者の動向が今後どうなるのかが注目されるところです。
このほか、「いじめ」に起因する事件は前年比150件増の410件、検挙・補導者は同213人増の724人と増えており、大津市の中学生いじめ自殺事件を契機に警察が積極的にいじめ事件に関与し始めたことがうかがえます。

少年犯罪とは逆に、保護者としてより心配なのが子どもの犯罪被害でしょう。子どもが犯罪被害者となった事件は、2004(平成16)年の35万6,426件から13(同25)年は20万921件へと減少しています。しかし、「強制わいせつ」の被害は前年比4.4%増の3,958件と増加しており、中でも未就学児が同13.2%増の86件、小学生が同4.9%増の936件、中学生が同6.5%増の589件でした。強制わいせつの被害を年齢層別に見ると、「0~5歳」が10.9%増の61件、「6~12歳」が5.7%増の1,056件、「13~19歳」が同3.8%増の2,841件となっています。小さな子どもの被害の増えていることが懸念されます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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