東南海地震の危険、沿岸部の学校は早急な対策が必要-渡辺敦司-

東日本大震災から3年半がたちます。先の豪雨災害に見られるように日本ではいつ、どこにいても自然災害に遭う可能性から逃れられないのですから、いつまでも震災のことを忘れず、教訓として全国に生かさなければなりません。とりわけ課題になっているのが、南海トラフ地震への対応です。中でも学校施設が、子どもだけでなく地域住民の命と生活を守る場所として重要であることは言うまでもありません。しかし東日本大震災の被害状況から考えると、まだまだ多くの学校が「危険」な場所にあることも確かです。

8月に九州大学で行われた日本教育学会の大会では、東南海地域の7県について調査した結果がシンポジウムで報告されました。それによると、海岸線や近隣の河川から4km圏内にある小・中学校の割合は、神奈川23.0%、静岡29.0%、愛知18.3%、三重38.3%、和歌山30.5%、徳島28.7%、高知38.9%でした。そのうち815校から得た回答を集計したところ、海岸から学校までの距離は平均1.7kmで、1km以内という学校が44.9%と半数近くとなっています。59.2%を占める県もありました。
もちろん海岸に近くても、高台にあれば津波被害から逃れられます。海抜を尋ねると、平均は14.3mでしたが、5m以下という学校が41.2%を占めており、10m以下を含めると63.1%にもなります。中には5m以下の学校が75.6%にもなる県もあります。東日本大震災の沿岸部が10mをゆうに超える津波に襲われたことを考えると、やはり心配になります。

それでも東北地方の沿岸部のように津波から避難できる高台が整備されていれば、命は助かります。津波用の高台から学校の距離は、平均505.7m。県によって平均385.9~636.6mと差があります。避難路の種類は「山道」33.3%、「階段」21.3%などです。
東日本大震災では、沿岸部でなくても津波が川をさかのぼって海岸近くに匹敵する甚大な被害をもたらすという「盲点」がありました。7県でも近隣に河川がある学校は73.7%にも上っており、その距離は平均519.9m。250m以内という学校も45.1%を占めています。
何よりハザードマップ(災害予測地図)による津波浸水区域に入っているという学校が43.4%あり、70%近くになっているのも2県あります。東日本大震災では「想定外」の被害が広がり、ハザードマップに入っていないからといって安心できないというのも教訓です。実際にはもっと多くの学校で注意すべきでしょう。
津波浸水区域にあり、海岸から1km以内で、しかも海抜5m以下という「極めてリスクの高い学校」は、16.4%に当たる134校でした。これらは早急な対策が必要です。

学校の立地条件は、すぐに変えることはできません。また、7県の沿岸部の学校も9割が自治体の避難場所に指定されています。地域とも連携しながら、学校が置かれた条件の下で具体的に「最悪」の事態を想定しながら、命を守るための避難訓練や安全教育を実施することが求められます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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