幼児が失敗を怖がるようになったら?【前編】恐れは成長の証

乳児期から幼児期になると、「うまくできないからママがやって」「私は跳び箱はやりたくない」と言って、自分の苦手なことや嫌いなことを避けるお子さまも多いようです。どうすれば失敗を恐れず、意欲的に取り組める子どもに育てることができるでしょうか。発達心理学・幼児教育の専門家である東京学芸大学の岩立京子先生に教えていただきました。



失敗を怖がるのは成長の証

「子どもには何事にも果敢にチャレンジしてほしい」と願う保護者のかたが多いと思います。ただ、お子さまに失敗を恐れる気持ちが芽生えてくるのは、発達段階から見て、ごく自然なことです。1、2歳児では、自分の実力を超えることをやりたがりますが、3歳を過ぎると徐々に「失敗してしまうかもしれない」「うまくできないかもしれない」と予測できるようになるため、挑戦をためらってしまうことがあるのです。
また、4、5歳になると幼稚園や保育園の仲間と自分を比較するようになり、競争意識が高まります。ただ、自分の能力を把握できていませんから、うまくできないと怒ったり泣いたりし、思いどおりにならないことがあるとわかると失敗を怖がるようにもなってしまうのです。



失敗を怖がる理由

幼児期になるとどのお子さまにも「失敗は嫌だな」という気持ちが芽生えてきますが、そうした気持ちをより強く持ってしまうお子さまがいます。

(1)過去の体験がトラウマになっているお子さま
過去に、大きな失敗をして笑われたり、つらい思いをしたりした場合、そうした経験が本人のトラウマになってしまうことがあります。

(2)失敗に厳しい環境にいるお子さま
失敗に対して「ダメじゃない」と叱ったり、「そんなこともできないのね」と笑ったりからかったりするかたが周囲にいると、子どもは自信をなくしてしまいます。

(3)プライドが高いお子さま
プライドが高く、ほかの人に負けたくないという気持ちが強いお子さまの場合、失敗した姿を見せたくないがゆえに挑戦を避けることがあります。

(4)身体や心の発達がゆるやかなお子さま
病気がちなお子さまや早生まれのお子さまなどは、周囲のお子さまより身体や心の発達がゆっくりであることがあるため、劣等感を覚えやすいことがあります。



「失敗しても大丈夫」と受け止めて!

失敗してもへこたれないお子さまを育てるには、「失敗しても大丈夫だよ」ということを、生活のさまざまな場面でお子さまに伝えてほしいと思います。そのうえで、「ママ、やってー」「できないよー」と言うのであれば、なぜやりたくないのか、なぜ怖いのか、その気持ちをじっくりと受け止めてあげましょう。挑戦した結果、うまくいかなかった場合も同じです。残念だった気分やイライラする気分を十分に受け止めてあげてください。
もうすこしで逆上がりができそうだったのに、練習を途中でやめてしまったといった場合、保護者としては、最後までやらせて達成感を得てほしいと思うかもしれません。でも、お子さまが「嫌だ」と言ったら、「そうかー、今日はがんばったね」「ちょっと残念だったねー、また今度やろうか」などと言ってあげればよいと思います。取り組んだ過程はほめてあげて、残念だった気持ちを共感してあげましょう。じっくり保護者が受け止めてあげることで気分転換ができ、また挑戦しようと思えるようになるのです。

この際、注意していただきたいのは、失敗を怖がるお子さまを「一人でできるでしょ」と突き放したり、「こんなこともできないのね」と否定したり、怒ったりすることです。強い言葉を言われても平気な子もいますが、敏感な子はとても傷ついてしまいます。こうした対応では次への意欲にはつながりません。まずはお子さまの気持ちをしっかり受け止めることから始めてほしいと思います。

次回は、子どもを伸ばす保護者のサポート方法をお伺いします。


プロフィール


岩立京子

東京学芸大学総合教育科学系教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士を養成するかたわら、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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