大人が作る「疲れた」が口癖の子どもたち[やる気を引き出すコーチング]

最近また、興味深い話を耳にしました。ある保育園で、子どもたちが、「疲れたー!」という言葉をよく使っているというのです。保育園児といえば、3~6歳でしょうか。
「え? そんなに、小さいうちからもう疲れているの? 最近の保育園児もなかなか大変なんだなー」と、純粋に思いましたが、どうやら、本当に疲れているわけではないようなのです。「疲れた」という言葉の意味をまだよくわからないまま使っている子もいるらしいのです。いったい、どういうことなのでしょうか?



大人が使っている言葉が子どもの枠を作る

どうやら、家庭で親が「疲れた、疲れた」と言っているのを覚えてきて使っているのではないか?という話でした。言葉を覚え始めた子どもたちにとっては、たしかにそういうこともあるだろうなと思いますが、ちょっと恐ろしいことだと思いませんか?

「疲れる」という感覚を自分で体験して認識する前から、「何かしたあとは疲れる」という思い込みの枠組みができあがってしまうとしたら怖いですね。きっと、子どもなりにいろいろな感覚をつかめるはずなのに、たとえば、「友達と一緒で楽しかった」「上手にできなくて悔しかった」「最後までできてうれしかった」などの感情を味わう前に、「疲れた」の言葉で終わらせてしまうのはもったいないことです。

この話を聞いて、以前、小学4年生の授業をやらせていただいた時のことを思い出しました。「どんな大人になりたいですか? 今、思いつくことを書いてみましょう!」というわたしの投げかけに、「こうむいん」と書いている子どもが何人かいて驚かされました。
「公務員」自体は、とても重要な存在だと思うのですが、「本当に意味をわかって書いているのかな?」という疑問がわきました。一言で「公務員」と言っても、いろいろな仕事があります。役所の窓口にいる人も公務員ですが、学校の先生も、消防士さんも、保健師さんも公務員です。
「『こうむいん』って、どんなお仕事をする人になりたいの?」と聞いてみました。
「……わかんない」という返事が返ってきた時、わたしは確信しました。「ああ、親に、『公務員は良いぞ』って言われているんだな」。すべての公務員のかたがそうだとは言いません。しかし、公務員試験に合格することがゴールになってしまって、合格したとたん、自分を磨くことをやめてしまう人をなんとかしてほしいという研修依頼がわたしのところにもよく来ることも事実です。どんな仕事をしたいかよりも、「公務員になること」が目標になってしまうようなことが、大人が何気なく使っている言葉によって引き起こされてはいないだろうかと考えさせられました。



大人が夢を語る効果

一般のかた向けのコーチング勉強会に、時々、中高校生や大学生が参加してくれることがあります。「親に連れてこられて」という子どもが大半ですが、終了後には、笑顔で「来てよかったです」と言ってくれます。
「どんなところがよかった?」と聞くと、こんな答えが返ってくることがあります。
「ここに来てる大人の人たちって、とても元気ですよね! 自分の周りの大人とはちょっと違うなって感じ。普通、仕事はしんどいとかつまらないとか、そんな話ばっかりですよね。ここに来ている人みたいに夢を話せたら良いなって思いました」。そんなことが、子どもたちには、とても新鮮に映るようです。
たしかに、いつも、「しんどい、疲れた」と言っている大人から、「夢を持とう!」とか「もっとやる気を出せ!」とか言われても、子どもたちの心はまったく動きません。

夢と言っても、そんなに大げさなことを語らなくてもよいと思います。「ランニングを始めてみる」「写真コンテストに応募してみる」「自分で野菜を作ってみる」など、何でもよいのです。日頃、大人が使っているマイナスな口ぐせを「やってみたいこと」に変えるだけで、子どもたちのやる気も引き出されていくのではないかと思います。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,575円=税込み>

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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