「発達障害」、高校での理解はまだ不十分?-渡辺敦司-

かつての「特殊教育」から、発達障害のある子どもにも対象を広げた「特別支援教育」に移行してから8年目を迎えました。通常の小・中学校はもとより、高校でも特別支援教育への対応が求められています。文部科学省の調査(外部のPDFにリンク)によると小・中学校の通常学級には発達障害の可能性のある児童・生徒が6.5%いると推計されており、その多くは通常の高校に進学していると見られます。高校側でも徐々に理解や対応は進んでいるのですが、保護者の立場からすると、まだまだだというのが実感のようです。

1990(平成2)年から発達障害の一種である学習障害(LD)の問題に取り組んできたNPO法人「全国LD親の会」は、会員とその子どもを対象とした「LD等の発達障害のある高校生の実態調査(外部のPDFにリンク)」の結果をまとめました。2005(平成17)年に続く2回目の調査です。それによると、特別支援学校高等部も含めた高校相当の学校で発達障害に「理解がある」「どちらかといえば理解がある」との回答は、6割から8割に上昇。高校でも7割を占めるようになりました。
ただし、各学校に発達障害に対する理解がある教職員がどのくらいいるかと尋ねると、「半数以上~ほとんどの教員」と答えたのは、高校で3割にとどまりました。「分からない」という回答が5割を占めているのですが、それだけ支援を受けられるかどうかがよく見えないということの表れかもしれません。公私別では、私立高校が3割を超えているのに対して、公立高校では2割を超える程度となっており、公立のほうが遅れているというのが保護者の実感のようです。6月に行われた同会の公開フォーラムで結果を発表した東條裕志理事長は「高校での理解は進んでいるが、親としては物足りない」との見方を示しました。

個別に教科学習の支援があるかどうかを尋ねても、高校では3人に1人が「必要ない」としたものの、「ある」と回答したのは2割を超える程度にとどまりました。公私別では、やはり公立で対応が遅れているようです。具体的にどんな支援があればよいか聞いたところ、「補習」「個別指導」が多く挙がったほか、ノートが取れないことから写真撮影を許可したり、要点をプリントにしたりしてほしいという要望もありました。
進路選択に関して困っていることとしては、「本人の適性がわからない」との回答が高校で半数を占めています。今や2人に1人が4年制大学に行く時代ですが、3人に1人は「大学等の理解がどれくらいあるか不安」としています。

LD等の発達障害は知的発達の遅れを伴わないため、適切な支援が受けられれば持っている能力を伸ばし、社会で大きな活躍をすることもできます。かの発明王エジソンも発達障害があったと見られていますし、米国の俳優トム・クルーズは文字を読むことが困難なLDであることを明らかにしています。「変わった子」として見過ごすのではなく、きめ細かな対応を行うことが求められます。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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