国公立大で拡大する推薦入試 定員増や女子枠設置も

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近年は、国公立大・私立大ともに「推薦入試(年内入試)」によって入学する学生が増えています。
さらに、一部の大学では「女子枠」と呼ばれる女子学生の募集枠を導入する大学・学部も出てくるなど、推薦入試の内容も年々変化しています。
この記事では、推薦入試の最新動向とあわせて、推薦入試で問われる力についてもお伝えします。
お子さまの進路の可能性を広げるために、推薦入試についての情報をしっかり押さえましょう。

※この記事では、大学入試の学校推薦型選抜・総合型選抜を「推薦入試」として記載・紹介しています。

この記事のポイント

国公立大では推薦入試による入学者がこの15年で大きく増加

学校推薦型選抜・総合型選抜は、一般選抜以外の入試方式ということで《推薦入試》と総称されることが多いようです。
これらの入試は、 12月末までに合否が決まるケースが多いことから「年内入試」とも呼ばれています。
2022年度入試では、「推薦入試による入学者数」は全体の50.3%となり、「一般選抜による入学者数」を上回っています。

大学の設置区分別で見ると、入学者全体のうち推薦入試の割合が高いのは私立大ではあるものの、国公立大もこの15年ほどで推薦入試による入学者が大きく増えています。

※文部科学省公表資料をもとに作成。

保護者のかたが大学受験を経験したころは、国公立大が推薦入試を実施するケースはまだ少なかったかもしれませんが、状況は変化しているのです。
今後も国公立大の推薦入試枠が拡大する可能性は高いので、お子さまが国公立大志望の場合は、推薦入試へのチャレンジも視野に入れておくことをお勧めします。

東北、中部、中国・四国エリアの国公立大では推薦入試枠の比率が高い

国公立大の推薦入試にフォーカスしてみると、地域ごとに状況が異なっていることがわかります。
一般選抜と推薦入試(学校推薦型・総合型選抜)の募集人員比率をエリア別に比較すると、東北や中部地方、中国・四国といったエリアでは、全体のうち約30%が推薦入試による募集となっています。

これらのエリアで推薦入試が拡大傾向にある背景の一つには、各地域の旧帝大などをはじめとする大学が推薦入試を推進していることが挙げられます。

たとえば東北エリアの東北大は、推薦入試に力を入れており、推薦入試での募集比率が約3割に達しています。

また中国・四国エリアにおいてトップ校の1つとされる岡山大では、2023年度入試から一般選抜の後期日程を廃止し、その人数枠のほとんどを推薦入試の募集人員に回しています。

これらの大学の動向に合わせて、各エリアにあるそれ以外の大学でも推薦入試を積極的に拡大する傾向が見られます。
そのため、地域の高校でも推薦入試を意識した指導を取り入れるようになり、この流れを受けてエリア内の各大学ではますます推薦入試に力を入れる……という循環が起こっているのです。

各大学が推薦入試に力を入れる理由はさまざまですが、1つには「意欲の高い学生に入学してもらいたい」という思いがあるようです。
実際、大学からは「推薦入試を経て入学した学生は意識が高く、伸びる学生が多い」という声も多く聞かれます。

※上記データは2023年度入試の情報
※出典:文部科学省:令和5年度国公立大学入学者選抜の概要(https://www.mext.go.jp/content/20221014-mxt_daigakuc02-000025217_1.pdf)より作成

【入試動向】「女子枠」「探究型」「高大接続型」…新たなタイプの推薦入試に注目

推薦入試の募集枠や入試スタイルにも、新たなタイプのものが次々と登場しています。
なかでも注目したいトピックを2つ取り上げてご紹介します。

■「女子枠」を新設する国公立大が増加中

東京工業大では、2024年度入試の総合型選抜・学校推薦型選抜で、女性を対象とした「女子枠」を導入すると発表しました。

東京工業大以外でも複数の国公立大・私立大で、理工系学部を中心に推薦入試の女子枠を導入する大学が急増しています。

各大学で女子枠の新設が続いている背景には、「女性の理工系人材が不足していること」「学びの場に多様な価値観が求められていること」などがあるといわれています。
理工系の学問に関心のある娘さんがいらっしゃるご家庭では、推薦入試の女子枠も積極的に検討し、実施大学について調べてみてはいかがでしょうか。

■「探究型入試」「高大接続型入試」など

推薦入試の形態として近年、「探究型」や「高大接続型」と呼ばれるスタイルの入試を導入する大学・学部が出てきています。

「探究型入試」は、高校で行ってきた探究学習の学びを活用できる推薦入試です。
このタイプの入試では、探究学習に取り組んだ成果としてレポートや小論文などを提出したり、プレゼンテーションを行ったりすることが多く、その内容が評価の対象になります。

「高大接続型入試」の推薦入試は、文字どおり「高校と大学の学びを接続する」といった意図から行われています。
入試の内容は、その大学で行われている講義を受講した成績が評価の対象になるものなど大学・学部によってさまざまです。

多くの推薦入試は高3の秋から行われるため、入試対策は夏休み前から本格化することが多いようです。
しかし、高校3年間における探究学習の成果が問われる「探究型入試」などでは、高校で行ってきた活動そのものが入試にもつながっていることになります。
「今の学びが入試にもつながっている」という意識をもって、日々の授業に取り組むことが大切といえるでしょう。

推薦入試で問われるのは、「深掘り・言語化力」

推薦入試での受験を検討するにあたっては、「目を引く活動をしているかどうかが評価対象になる」と考える人が多いのではないでしょうか。

「部活やコンテストなどで優秀な成績を残していないと合格できないのではないか」「留学など特別な体験をしないと難しいのでは?」と心配されるお子さまや保護者のかたもいらっしゃるかもしれません。

しかし、実際の推薦入試で問われるのは、経験や成果そのものではなく、活動の動機やプロセスです。
大学側は、「なぜその活動をしたいと思ったか」「その活動をするなかで、どんな気付きや学びがあったか」を深掘りして考え、自分の言葉で語れるかどうかを評価します。
積極的にいろいろなチャレンジを重ねることは大切ですが、「活動するプロセスの中で何を考えたか」を、メモするなどの形で言葉として残しておくことはさらに重要だといえるでしょう。

これらのプロセスを経て創られた志望理由のことを、ベネッセでは「マイ・ストーリー」と言っています。
納得度の高い「マイ・ストーリー」を語れることは、推薦入試において大きなポイントとなります。

まとめ & 実践 TIPS

推薦入試が変化していくなかで、保護者のかたの役割はますます大きくなっています。
たとえば、日々の勉強や部活などで忙しいお子さまに代わって情報収集をしてあげれば、進路の可能性を広げる一助になるでしょう。

また、保護者からの問いかけによって、お子さまが学問や大学・学部に対する興味を深めていけることも多々あります。
お子さまが「この大学では、こんな推薦入試があるんだ」「〇〇学部になんとなく興味があるんだけど」と口にしたら、さらに対話を続けてみるとよいでしょう。
この積み重ねが、推薦入試での大きな評価ポイントになる「興味を深掘りし、言語化する力」を身に付けるきっかけになるはずです。

プロフィール


谷本 祐一郎

1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。
九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。2021年度より島根県総合教育審議会委員を担当。
https://benesse.jp/expert/10008.html

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