【2025年度大学入試】最新動向と推薦入試(年内入試)のポイントは?

  • 大学受験

2025年度の大学入試は、新課程入試の初年度ということで注目を集めています。
そこでこの記事では、「2024年度第1回ベネッセ・駿台大学入学共通テスト模試」の集計結果からわかった一般選抜の最新動向や、近年の入試における潮流となっている年内入試のトレンドについてご紹介します。
大学入試の最新情報を押さえて、お子さまの学習計画などに役立てていただければ幸いです。

※この記事では、大学入試の学校推薦型選抜・総合型選抜を「推薦入試(年内入試)」として記載・紹介しています。

この記事のポイント

2025年度大学入試の志望動向は?

2025年度大学入試に向けて、まずは「2024年度第1回ベネッセ・駿台大学入学共通テスト模試」(以下、共通テスト模試)の集計結果をもとに、現状の志望動向をお伝えします。
実際の2025年度入試結果が明らかになる前に、ひと足早く受験生の動向をキャッチしておきましょう。

■全体の動向

2024年度まで、18歳人口(現高校3年生の人数)は減少傾向が続いていました。
しかし2025年度入試においては、18歳人口は約110万人で、前年と比較して約2.5%の増加が見込まれます。
また、この20年ほどは、出身高校と同じ所在地の大学に入学する「地元志向」の受験生の割合が増えています。
近年は、「できるだけ自宅から大学に通ってほしい」と希望する保護者が多いこともあり、この傾向は2025年度も続くと考えられます。

続いて、現高3生の志望動向を国公立大・私立大別にご紹介します。

国公立大では、全体の志望者数は対前年指数(前年との比較を示す数値。101以上なら前年より増えたことを示す)103でした。
一方で、難関国立10大の志望者数は対前年指数105と増加
2025年度は新課程入試の初年度のため、確実に合格できそうな大学を志望する安全志向の受験生が多いのではないかと予想されていました。
しかし、9月の共通テスト模試の結果からは、難関大を志望する受験生が自分の志望大を貫いている傾向があることが伺えました。

*難関国立10大:北海道大、東北大、東京大、東京科学大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大。
*東京科学大の2023年度の値は東京工業大と東京医科歯科大の合算値。

私立大でも、難関13私立大志望者数の対前年指数108と増加し、国公立大の志望者と同様に強気志向が見られました。
特に、大学入学共通テストの得点のみで合否が決まる「共通テスト利用入試」の難関13私立大志望者数は、対前年指数116と大きく増加しました。
これは、難関国立大志望者が難関私立大を志望する際の対策の負担を減らしたい傾向が強まっているためと考えられます。

*難関13私立大:早稲田大、慶応義塾大、上智大、東京理科大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大、関西大、関西学院大、同志社大、立命館大

■学部系統別の志望動向

学部系統別の志望動向に目を向けると、国公立大・私立大とも語学、国際関係学系統の志望者増加がめだちます。
近年は、コロナ禍などを背景として理系学部の人気が続いていました。
しかし2025年度の志望動向では落ち着きを見せ、極端な理高文低(文系学部に比べて理系学部の人気が高い現象)の傾向は薄れつつあるようです。

※グラフの数値は四捨五入したものを表示しています

なお近年は、国公立大・私立大ともに情報系統の志願者が増加傾向にあります。
また、文部科学省の「大学・高専機能強化支援事業」(デジタル分野などの成長分野を担う高度専門人材の育成を助成金によって支援する施策)を受けて、各大学では情報系統学部新設や定員増員などの動きが見られます。
情報系統学部への進学を考えているお子さまにとっては、大きなチャンスと言えそうですね。

新課程入試の共通テストでは国語と情報が要注目!

2025年度からの新課程入試開始に伴い、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)においても、試験時間や出題内容などの変更があります。

中でも注目されているのが、大問が1問増える国語と、新設教科である情報です。
この2教科について、押さえるべきポイントを解説していきましょう。

■国語(実用的な文章)では、読解や図・グラフの読み取り演習量が得点の差に?

国語は、これまで2問だった「近代以降の文章」が3問になり、合計5大問の構成になります。
大問が増えるため、2024年度まで80分だった試験時間も、10分延長されて90分となります。

追加される「近代以降の文章」では、小説や評論とは異なる「実用的文章」の読解が課される予定です。
大学入試センターが公表している試作問題では、報告書やレポートといった文章のほか複数の図やグラフなどを読み取って解答する問題が出題されています。
ベネッセが2024年9月、約140名の高校の先生方に向けて実施したアンケートからは、「実用的文章」の対策法に課題を感じていらっしゃる現状が浮かび上がりました。
具体的には「大問ごとの時間配分について判断が難しい」といった声が届いています。

*2024年9月17日、18日開催 WEBセミナー「新課程 共通テスト」の受験戦略を考える 国語ご担当先生の事前アンケート

「共通テスト模試」の結果を見ると、「実用的文章」の大問中、複数の資料から主張の根拠を考察する小問の全体正解率は41.4%でした。
それぞれの資料に示された内容を整理し、整理した内容と文章の主張との内容を吟味しながら解答できるかどうかが、学習のポイントになります。

ただし、2024年度までの共通テストでも、複数の資料を関連づけて整理しながら解答する問題は出題されています。
2024年度の共通テストで好結果を実感している高校では、授業の中で多くの資料や図、グラフの読み取り演習を行ったり、定期テストで資料の読み取り問題や、読解量の多い問題を出題したりしていたことがわかっています。
2025年度以降の共通テストで得点を伸ばすための対策として、頭に入れておくとよさそうです。

*「2024年度 新課程および教育活動全般に関する調査」より。

■新設教科の「情報」は「プログラミング」が得点の分かれ目に?

「情報」は2025年度から共通テストに新設される教科です。
多くの高校では、1年生のうちに「情報Ⅰ」の授業が終わっており、共通テスト対策として演習を行うのは3年生から、というケースがめだちます。
ベネッセが2024年9月に、高校の先生方約130名に向けて実施したアンケートでは、多くの先生から「演習時間の不足」の声が上がりました。

*2024年9月17日、18日開催 WEBセミナー「新課程 共通テスト」の受験戦略を考える 情報ご担当先生の事前アンケート

「情報Ⅰ」の各分野の中でも、課題視されているのが「プログラミング」の分野です。
「共通テスト模試」の結果を高校2年の2月から高校3年の9月にかけて時系列で比較すると、「プログラミング」の大問はそれ以外の大問に比べて、平均点が伸び悩んでいました。
ただし、受験者の学力層別に見ると、偏差値帯別にしっかりと差がついている結果となりました。
これは、問題文で提示された処理の流れをプログラムとして表現するための思考力が身に付いているかどうかが、得点の分かれ目になったと考えられます。

ただ、お子さまが情報に苦手意識を持っているようでも、不安視しすぎる必要はないと思います。
各大学が発表した共通テスト全体における「情報Ⅰ」の配点を見ると、配点比率が10%未満の大学が73%と多くの割合を占めています。
そこで、まずはお子さまの志望大・学部における情報の配点比率を確認しましょう。
そのうえで、情報を含めてどの教科にどれぐらい力を入れて対策するべきかのバランスを決めていくとよさそうです。

年内入試は国公立大・私立大問わず引き続き拡大傾向

近年の大学入試で潮流といえるのが、推薦入試(学校推薦型選抜・総合型選抜)による入学者の増加です。
特に2022年度入試以降は、全大学入学者のうち推薦入試による入学者は5割を超え、一般選抜による入学者を上回っています。
推薦入試は、年内でほぼ合否が決まることから「年内入試」と呼ばれることも多くあります。
ここからは、国公立大・私立大別に、年内入試の動向をご紹介します。

■国公立大

現状では、国公立大における年内入試入学者は入学者全体のうち21.4%で、まだ多いとはいえません。
ただし東北地方や中国・四国地方では、年内入試の募集人員比率が募集人員全体の3割程度と高めです。
さらに難関国立大でも、年内入試の募集割合が拡大傾向にあり、国公立大でも年内入試の入学者は今後増えていくと考えられます。

■私立大

私立大では、2023年度の年内入試入学者は59.7%で、入学者全体の約6割にあたります。
難関私立大では一般選抜の募集割合が高いものの、近年は難関私立大と私立高校の連携による学校推薦型選抜(内部進学)入学者も増えています。
大学の難易度にかかわらず、今後も年内入試は拡大傾向が予想されます。

年内入試成功のカギを握るのは「探究」!?

年内入試では、面接や小論文、教科試験、志望理由書提出、グループディスカッションなどが課されます。
ベネッセが年内入試実施大学に向けて行ったアンケートでは、「面接」の結果を重視する大学が多くみられました。
また、難関大になるほど小論文を課す大学が増える傾向も見られます。

*「学校推薦型・総合型選抜に関するアンケート」(2023年10月~12月実施)より。回答件数591件(国公立大131件、私立大460件)。

では、面接や志望理由書で何を語れば年内入試成功につながりやすいのでしょうか?
各大学への調査によってわかってきたのは、「どれだけ明確に志望動機を語れるか」です。
年内入試というと、保護者のかたは「コンクールでの受賞歴や部活の大会実績、海外留学など目を引く経験がないと難しいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし本当に重要なのは、「挑戦する過程でどんな学びを得られたか」を自分の言葉で語る力です。
ベネッセでは「自らの経験から学んだことをもとに練り上げた志望動機」を「マイ・ストーリー」と呼んでいます。

この「マイ・ストーリー」を語る力を高めるのに役立つと考えられるのが、高校の授業で実施されている「総合的な探究の時間」(以下、探究)の授業です。

「探究」は、生徒が自分自身の興味・関心に基づいて自ら課題を設定し、情報収集や整理・分析、まとめ・発表を経て、新たに生まれた課題を探究していくサイクルで進められます。
このプロセスは、生徒が自身の経験から得たことをもとに考え、「マイ・ストーリー」をつくり上げる過程と共通している面があります。
各大学でも探究活動に注目し、探究を通じて高校生のポテンシャルを評価する動きが見られます。
年内入試においても、探究活動の内容を重視して合否を決めるスタイルが、国公立大・私立大問わず増加しています。

年内入試へのチャレンジも視野に入れて、高校1・2年生のお子さまに、探究活動に力を入れて取り組むことをアドバイスしてあげてはいかがでしょうか?

まとめ & 実践 TIPS

大学入試の最新動向を保護者のかたが理解し、ご家庭でさりげなく話題にする中で、お子さまは自然と受験への意識を高めていけます。 お子さまが未来を見据えて日々の学習に取り組めるよう、今後も入試情報をアップデートしていきましょう。

※ここで紹介する内容は、記事配信日時点の情報をもとに制作しています。

プロフィール


谷本 祐一郎

1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。
九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。2021年度より島根県総合教育審議会委員を担当。
https://benesse.jp/expert/10008.html

  • 大学受験

子育て・教育Q&A