大学生は現状の授業に満足……でも「ついていけない」4割以上‐斎藤剛史‐

グローバル化の進展に伴い、身に付けた知識の量だけでなく、論理的思考力・判断力・表現力などといった力が重視されるようになってきました。ところが日本の大学生は、英語で行う授業、自分の意見や考えを述べる授業などが増えることをあまり望んでいないことが国立教育政策研究所の調査(外部のPDFにリンク)でわかりました。日本の大学生は、大学の授業についてどのように感じているのでしょうか。

調査は2013(平成25)年12月から14(同26)年1月にかけて、国公私立大学の学部学生2,400人を対象に実施し、うち1,649人(68.7%)から回答を得ました。大学改革の一環として知識伝達型の一方通行的な講義形式の授業から、学生が主体的に発表したり討論したりする参加型・双方向型の授業などへの転換が強く求められています。これに対して現在の大学生が「現状で十分」と回答した割合は、「授業中に自分の意見や考えを述べる」が71.9%、「グループワークなど、学生が参加する機会がある」が67.8%、「主に英語でおこなわれる授業」が63.6%などでした。一方、授業の現状について「経験がない」(「あまりない」と「ほとんどない」の合計)という割合は、「授業中に自分の意見や考えを述べる」が63.4%、「グループワークなど、学生が参加する機会がある」が51.2%、「主に英語でおこなわれる授業」が73.9%などでした。つまり、参加型・双方向型の授業、英語のみで行う授業などを大学生の多くが経験していないにもかかわらず、現状で十分と考えていることになります。

では大学生が望んでいる授業とは、どんなものでしょうか。「増やしてほしい」という回答が多かったのは、「授業内容に興味がわくように工夫されている」が57.8%、「理解がしやすいように教え方が工夫されている」が57.6%、「適切なコメントが付されて課題などの提出物が返却される」が55.4%などでした。日本の大学生は、丁寧でわかりやすい授業を望んでおり、主体的に参加する授業はあまり求めていないようです。実際、「授業の内容についていけてない」という大学生は、「ときどきある」が37.0%、「よくある」が7.7%で、合計44.7%に上っています。また、「予習や復習をしたうえで授業にのぞんでいる」というのも38.5%にすぎませんでした。
しかし、日本の大学生が不真面目で態度が悪いのかというと、そうでもないようです。「興味がわかない授業でもきちんと出席する」が85.0%、「なるべく良い成績をとるようにしている」が81.0%といずれも8割以上に上っています。このほか、「ものごとを分析的・批判的に考える」ことについて、大学の授業が役立っていると66.0%が回答する一方、それに関する自分の実力については53.3%と半数以上が「不十分」と答えています。

現在の大学の授業に満足し、評価する声が多い一方、自分の実力には自信がないというのも日本の学生の特徴のようです。このような大学生の意識や姿勢を変えていくには、大学の授業改革だけでは難しいでしょう。それ以前の高校以下の授業の在り方も変えていく必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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