「~しなさい」よりも子どもに伝わる言葉とは?[やる気を引き出すコーチング]

近所のスーパーで買い物をしている時、駅や道路を歩いている時、よく聞こえてくる言葉があります。
「早く来なさい!」
「言うこと聞きなさい!」
「静かにしなさい!」
お母さんが声を荒げて、お子さんに向かって叫んでいます。
「ああ、お母さんもたいへんだなー。お子さんもつらそうだなー。その言葉では、お互いにイライラするだけのような気がするんだけど……」
などと思いながら、こちらもだんだん気が重くなっていきます。

そんな折、ある小学生向けのサークル活動の現場を見学させていただく機会がありました。「なるほど! 『~しなさい』はこう言えばいいのか!」と勉強になったことがありましたので、今回はそれをご紹介します。



「~しよう!」と伝える

このサークル活動を主催している皆さんは、ご自身もお子さんをお持ちのお母さんたちです。子どもたちに対して、いっさい、指示命令形を使わずに接していらっしゃいました。たとえば、「時間になったから、始めようね」。こんな言葉から活動がスタートします。
「まず、姿勢を正してみよう」
「次は、○○ちゃんのお話を聴いてみよう」
「おやつがあるから手を洗おうか」
「そろそろ片づけようか」
すべてが、Let’sのスタンスです。そして、大人ももちろん「一緒に」取り組みます。「~しなさい」と言わなくても、子どもたちは嬉々として動いています。「~しなさい」という言い方には、言われた側の意思はあまり尊重されず、上から目線で「やらされ感」があります。一方で、「~しよう」は、お互いに対等な関係で、一緒に取り組む楽しさや安心感がわいてくる言葉です。
この言い方は、各ご家庭でも、十分、応用可能なのではないかと思いました。朝の一場面を思い出してみても、
「早く起きなさい」ではなく「さあ、起きよう」
「ごはん食べなさい」ではなく「一緒にごはんを食べよう」
「出かける準備しなさい」ではなく「出かける準備しようか」
と声をかけることで、いつものピリピリとした空気が変わるように思うのです。



認める言葉を先に言う

このサークルのお母さんたちの対応は、実に見事です。途中で、こんな場面がありました。さっきまで、一緒に楽しく遊んでいた低学年のお子さんAちゃんがふてくされて、みんなの輪から離れてしまいました。「あれ? どうしたんだろう? ケンカでもしたのかな?」と思って見ていると、あるお母さんが、輪の中に入っていって、こう声をかけました。
「みんな、とても仲良く遊んでいたね。Aちゃんが、あっちに行っちゃったけど、どうしたのかな?」
「Aちゃんのおもちゃを、ほかの人が使ったから」
と、一人の子が答えました。
「そうなんだ。Aちゃんもみんなと遊んでいて、とても楽しそうだったのにね」
そんな一言二言の対話のあと、輪の中にいた別の子が、端っこですねているAちゃんのそばに行って、みんなの輪に呼び戻しました。その後は、何事もなかったかのように、みんなでまた仲良く遊んでいました。
「なんとも、アッパレ!」と感動した一コマでした。「どうしてそんなことしたの?」「仲良くしないとダメでしょ」「謝りなさい」などと一度も声を荒げることなく、問題を子どもたちに解決させてしまいました。認める言葉を先に伝えると、子どもたちは、大人に否定感を持つことなく、どうしたらいいのかを自分で考えて行動できるのです。
ご家庭でもぜひ、試してみていただけたらと思いました。「起きなさい」と言う前に、やっぱり、「○○ちゃん、おはよう! 今日もよく休めたね」などの一言があってもよいような気がします。そして、「今日もいい天気だよ。起きよう」と言ってあげたほうが、気分が前向きになりませんか。お母さんだって、ずっとイライラが減るように思います。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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