子どもの「勉強」への興味を引き出そう![やる気を引き出すコーチング]
また、新年度が始まりますね! 新しい学校、新しい学年、おのおのにワクワクドキドキされているころでしょう。「新学年になったらがんばる!」と、やる気も芽生えやすい季節ですね。そんなタイミングに、ぜひ試してみていただきたいなという親子のコミュニケーションを今回はご紹介したいと思います。
コーチング講座に通ってくださっているSさんのご家庭のお話です。Sさんのお子さんは、小学生のころからあまり勉強が好きになれず、中学校に入ってからも、成績は今ひとつだったそうです。ところが、ふとしたきっかけから、勉強に興味を持ち始め、成績も上がってきたというのです。
保護者自身が勉強に興味を持って質問する
Sさんは、こちらが一方的に話すのではなく、質問によって、お子さんから考えを引き出すことを試してみました。でも、最初は、どんな質問をしていいのか、よくわからなかったそうです。
「今日、学校、どうだった?」
「別に……」
こんな会話の繰り返しでした。
それでも、何か質問し続けてみようと思って、
「今日はどんな授業だった?」「どんな勉強をしたの?」などの質問をしてみました。
「数学」「方程式」と、単語しか返ってきませんでしたが、Sさんはお子さんの言葉を聴きながら、純粋に、
「そういうの昔、勉強したような気がする! へえー、懐かしい!」
と思ったそうです。
「それって、何だったっけ? お母さんもやったことあるけど、もうすっかり忘れたなー。それ、どうやるんだっけ? 何か公式があるんだよね?」
気が付けば、自分の興味が向くままに質問をしていたそうです。
「え? だから、こういうやつだよ」
と、お子さんが教科書を見せてくれました。
「そうそう! こんなのだった! で、これはどうなるの?」
「えーと、だから……この式をあてはめたら、こうなってこうなる、ってことじゃない?」
「どうして、これがこうなるの?」
「うーん……だから、これとこれが等しくなるようにするって、……たしか、先生言ってたかな」
「へー! なるほど! わかりやすいね。ほかには? ほかに勉強したことは?」
こんな会話を、科目に限らず、折々にするようになったそうです。このように、お子さんと勉強の話ができるようになった大きなポイントは、Sさんが、どんな話でも興味深く聴いてあげたことではないかと私は思います。
「へー! そうなんだ! 面白いね。お母さんも勉強になったわー」と言って聴いてもらえたら、お子さんもうれしくなり、どんどん話したくなるでしょう。
子どもから勉強を教えてもらう
そのうち、Sさんは時々、お子さんを冗談で先生扱いするようになりました。
「先生! この問題がわからないので、ちょっと教えてください」
しだいに、お子さんのほうが、得意そうに説明をしてくれるようになりました。中には、うまく教えられない問題もありました。すると、
「ええと、ちょっと待ってね。もう一回考えるから……」
と、自分で調べ始めました。こうして、自ずと勉強するようになったそうです。
人に教えてあげようと思ったら、自分自身が理解していないとなかなかできないことです。誰かに教えているうちに、自分でも「わかっていなかったこと」に気が付きます。これがアウトプットによる効果です。自分の内側にある理解を外側に向かって発信することで、理解が深まったり、理解していないことに対する気付きが起きたりします。これは、聴いてくれる人がいるから起きることです。
Sさん自身は、「これって、コーチングって言えるんでしょうか?」とおっしゃっていますが、私は、立派なコーチングだと思います。勉強に対する興味を引き出し、お母さんに教えるために、お子さんが自ら考え、学びを深めるきっかけを作られたことはすばらしいアプローチだと思います。
新学年になって、皆さんのお子さんは、どんなことを学んでくるのでしょうか? Sさんのように、興味を持って質問し、耳を傾けてみられるのはどうでしょうか。
『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』 <つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み> |