「併設型」中高一貫教育校は増加中も……公立は頭打ち? ‐斎藤剛史‐

文部科学省の調査によると、2013(平成25)年度に全国の中高一貫教育校の数は前年度より9校増の450校となったことがわかりました。一貫教育に対する保護者や子どもたちの根強い人気を裏付けていると言ってよいでしょう。ただ、公立学校に限ると1校増・1校減で差し引き前年度同数の184校となっており、増加にブレーキが掛かりました。

「併設型」中高一貫教育校は増加中も……公立は頭打ち? ‐斎藤剛史‐


「中高一貫教育校」は学校教育法の改正によって1999(平成11)年度から創設された新しい制度です。私立の「中高一貫校」はありましたが、設置者が同じ中学校と高校で実質的な一貫教育を行っているだけで、制度的裏付けはありませんでした。それを制度化したのが中高一貫教育校です。
1999(平成11)年度は全国4校でスタートしましたが、2003(同15)年度には118校、06(同18)年度には203校、08(同20)年度には337校と増加を続け、13(同25)年度は450校(国立5、公立184、私立261)となっています。すべての都道府県に中高一貫教育校があるほか、公立も富山県と鳥取県を除く45都道府県に設置されています。
中高一貫教育校には、修業年限6年間の学校である「中等教育学校」、県立中学校と県立高校など設置者が同じ中高を一貫させた「併設型」、市町村立中学校と県立高校など設置者が異なる中学校と高校を連携させた「連携型」の3タイプがあります。2013(平成25)年度の内訳は、「中等教育学校」が50校(国立4、公立29、私立17)、「併設型」が318校(国立1、公立74、私立243)、「連携型」が82校(公立81、私立1)となっています。

このうち連携型は生徒減少に悩む高校が地元中学生を確保しようとして実施する場合が多いのに対して、国公立の中等教育学校と併設型は社会のリーダー層の育成などを掲げる学校が多いのが特徴です。安い授業料で一貫教育を受けられるのもあり、保護者の関心も高いようです。
特に併設型(中・高1組で1校)は、2009(平成21)年度247校、10(同22)年度273校、11(同23)年度288校、12(同24)年度309校と増加しており、その人気の高さがうかがえます。ただし公立だけを見ると、2009(平成21)年度が3校増の63校、10(同22)年度が5校増の68校、11(同23)年度が1校増の69校、12(同24)年度が5校増の74校と増えていましたが、13(同25)年度は設置ゼロでした。2013(平成25)年度の増加分は、既存の私立中・高校が新たに中高一貫教育校の認可を取ったものです。
文科省の調査では、2014(平成26)年度以降に公立の併設型を計画しているのが5校あるので、一概に公立中高一貫教育校が頭打ちになったとは言い切れません。しかし、これまでずっと増え続けていた公立の併設型の設置が2013(平成25)年度はまったくなかったということは、全国的に公立中高一貫教育校の増加に一区切りがついたと見ることもできそうです。

既存の中・高校の転換による私立中高一貫教育校は今後も増えることは確実ですが、公立中高一貫教育校については2014(平成26)年度以降の動向を注意深く見守る必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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