受験を控えて緊張。どう励ませば?[教えて!親野先生]
子どもがミュージカルのオーディションを受けたとき、「落ち着かない。自信がない。落ちるかも」と言っていたので、「がんばって練習してきたんだから大丈夫だよ」と励ましました。そうしたら、「お母さんは私の気持ちを何もわかってくれない」と言われて、ショックでした。もうすぐ高校受験なのですが、子どもはまた「自信がない」と言いだすかもしれません。うまく励まして緊張をほぐすにはどうすればよいのでしょうか?(カンテラ さん:中学3年生女子)
親野先生からのアドバイス
カンテラさん、拝読いたしました。
受験を控えた我が子が不安を訴えてきたとき、どんな言葉を返せばよいのでしょうか? 保護者としては悩みますね。
よくあるのは、次のような励ましです。
・大丈夫だよ。今までがんばって勉強してきたんだから。
・努力は必ず報われるよ。実力があるんだからきっと受かるよ。
・模擬テストの偏差値で合格範囲だから大丈夫だよ。
または、次のようなアドバイスをするかもしれません。
・会場で緊張したら、目をつむって深呼吸するといいよ。
・軽いストレッチをすると緊張がほぐれて落ち着くよ。
・目をつむって「ああ、自分は落ち着いている、落ち着いている」「冷静だ、冷静だ」「できる、できる」と心で思っていると、実際に落ち着くよ。
・できることはやったんだから、あとは当日全力を尽くせばいいんだよ。結果は天に任せよう。
保護者は一生懸命考えて、これらの励ましやアドバイスをします。ところが、こういう励ましやアドバイスが子どもの心の中に入っていかないことが多いのです。
なぜなら、このとき子どもが欲しいのは励ましやアドバイスではないからです。このとき子どもが欲しいのは、共感なのです。
つまり、自分がどれくらい大変な思いでいるか、どれくらいつらい気持ちでいるか、それをわかってもらいたいのです。
ですから、励ましやアドバイスの前に、子どもの話を共感的に聞いてあげることが大切なのです。
「落ち着かない。私、自信がない。落ちるかも」と言ってきたら「落ち着かないね。試験の前ってイヤだね。早く終わってほしいよね」と共感してあげましょう。
すると、子どもはもっと愚痴をこぼせます。そうしたら、それにもすべて共感してあげてください。
保護者がたっぷり共感しながら聞いてあげれば、子どもは自分の不安な気持ちをたっぷり吐き出すことができます。すると、子どもは「お母さん・お父さんは私の気持ちをわかってくれる。自分がどれくらい大変な思いでいるかわかってくれる」と感じることができます。
これによって、子どもの不安な心が安らぎます。
励ましやアドバイスをするとしたら、たっぷり共感してからにしましょう。そうすれば、励ましやアドバイスも子どもの心の中に入っていくことができます。
共感がないまま、いきなり励ましやアドバイスをしてしまうと、子どもは、「お母さん・お父さんは私の気持ちをわかってくれない。自分がどれくらい大変な思いでいるかわかってくれない」と感じてしまいます。
場合によっては、「言ってもムダだ」「下手なこと言えばお説教される。言うだけ損だ」と感じてしまいます。
なぜなら、共感がないままの励ましやアドバイスは、子どもにとってお説教にしか聞こえないからです。言いたいことを言えないまま、話もろくに聞いてもらえないまま、大変さをわかってもらえないままそういうことを言われても、お説教にしか聞こえないのです。
ということで、ここでちょっと練習してみましょう。
子どもが「ああ、イヤだなあ。受かるか心配。試験なんてなんであるんだろう。早く終わってほしい」と言ったとき、まずは何と言って返しますか?
実際に、口に出して言ってみてください。
たとえば、「本当にイヤだよね。心配になるよね。試験なんてなければいいのにね。早く終わってのんびりしたいね」などがよいと思います。
間違っても、「何言っているの。みんな通る道なんだよ。そんなことでどうする? 自分に負けちゃダメだよ。がんばらなきゃダメだよ」などと返さないでくださいね。
こういう言葉は百害あって一利なしです。保護者は「教育的観点」からついこういった正論を押しつけてしまいがちですから、気を付けましょう。
何事においても、常に、共感を最優先してください。ほかに言いたいことがあっても、それは最後です。
何事にもまずは共感です。そうすれば、子どもは保護者に対して大きな信頼を寄せるようになります。
なぜなら、子どもにとって、信頼できる大人とは、自分のことをわかってくれる人だからです。自分のことをわかって許してくれる人、つまり共感してくれる人こそが、信頼できる大人なのです。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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