受験期に花粉症で悩まない! 【前編】花粉症治療は専門医へ

毎年2月くらいから花粉症についてのニュースが増え始めます。この時期は受験シーズンでもあります。そこで今回は、受験期を乗り切るための花粉症対策について、耳鼻咽喉科医師の大久保公裕先生に伺いました。



実は花粉症は複雑な病気です!

花粉症の主な症状は、鼻水・鼻づまり・くしゃみです。ただ、人によってくしゃみがひどい、鼻水ばかり出るなど、その症状はさまざまではないでしょうか。しかし、花粉症専門医以外の病院では、詳しく症状などを聞くこともなく、とおり一遍の治療がされることがあります。それでも、それなりに効果はあるでしょう。

ただ、花粉症は皆さんが思っているよりも、とても複雑な病気なのです。どのようなかたちで症状が出るかという「反応性」は、一人ひとり異なり、アレルギーの抗体の数やそれぞれのアレルギー細胞が出すヒスタミンの数(花粉症の症状の原因になっている物質)などの量も違います。また、鼻のかたちも鼻の病気の有無も、人によって違います。そのため、きちんと治療するには、花粉症専門医を受診し、自分に合った治療を受けることが大切なのです。

私は、症状を診るだけでなく、診察時に患者さんがどのように生活したいのかもじっくり伺うようにしています。花粉症の時期だけ症状をやわらげたいのか、それとも二度と花粉症にならない「体質」を手に入れたいのか。花粉症専門医は、そのどちらのご要望にもお応えできます。特にお子さまの場合は、勉強やスポーツに支障が出ないよう、専門医と相談しながら治療プランを選択することをおすすめします。



今年、花粉症の症状を抑えたい人に

花粉症を根本的に治療するには最低6か月前から治療が必要なので、今年受験を迎えるかたには根本治療は難しいため、症状を軽くするための対処治療になると思います。対処療法には、薬と手術の2つの治療法があります。

●内服薬・点鼻薬・点眼薬
市販薬は、万人向きのおだやかな薬です。花粉症の市販薬の多くが、第一世代の抗ヒスタミン薬であり、眠気や口が渇くという副作用が起こりやすく、また効いている時間も短いので、服用回数が多いものになっています。
専門医の処方する薬はそうした副作用の少ない薬を処方しています。まったく眠気の出ない「抗ロイコトリエン薬」「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」「Th2サイトカイン阻害薬」などが挙げられます。そのほか、炎症を効果的に抑えてくれるステロイド(副腎皮質ホルモン)などが、目や鼻にさしたりする局所薬として処方されることになります。受験生であれば、点鼻薬や点眼薬を中心にするとよいかもしれません。診察時には、今現在どのような症状で、どのように改善したいのか、具体的に医師に伝えましょう。

●レーザー手術
鼻炎症状が激しい場合は、レーザーで鼻の粘膜の一部を焼き、アレルギー反応を弱める治療法もあります。アレルギー反応を起こす粘膜の表面をじんわり焼いて、鼻づまりをなくします。シーズン前にレーザー手術を受ければ、何度も病院に行く必要もなく、薬を継続的に飲まなくてもよいことから、受験を控えたお子さまに行うこともあります。費用は、初診料・手術料・検査料を合わせると約1万円ほどです。
ただし、効果が継続するのは1シーズンのみです。レーザー治療は重い症状を回避するだけであって、花粉症を根本的に治すものではありません。お子さまが、今後花粉症を根本的に治療したいという場合は、じっくり治療を受けていくのがよいでしょう。

次回は、根本的に治療をするにはどうしたらよいか伺います。


プロフィール


大久保公裕

医学博士。日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科教授。1988年日本医科大学大学院耳鼻咽喉科卒業後、アメリカ国立衛生研究所に留学。著書に『あなたの知らない花粉症の治し方』(暮しの手帖社)など。

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