脳科学のプロ直伝「家で勉強ができない!」原因と集中する工夫は?保護者にできるサポートも

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「なぜか家だと勉強に集中できない……」とお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?そこで、脳科学の専門家・篠原菊紀先生監修のもと、家で勉強がはかどらない理由や、家で勉強に集中するために必要な対処法についてご紹介。保護者のかたには、お子さまの勉強を後押しするサポート方法をご紹介します。

この記事のポイント

家で勉強できない原因チェックリスト

家で勉強できないからといって、やる気がないわけではありません。やる気はあっても、次のような理由で勉強に集中しづらくなることがあります。下記の項目で当てはまるものをチェックして、何を改善すれば勉強に集中できるのか、確認してみましょう。

  • A
  • ・机の上やすぐ近くにスマホやタブレット、マンガなどが置いてある
  • ・家族の話し声や生活音が気になる
  • ・机や椅子の高さ、部屋の温度などが快適ではない
  • B
  • ・勉強を始める際、何から手を付けていいかわからない
  • ・どこまで勉強を進めるべきかわからず、めんどくさくなってしまう
  • C
  • ・遊び終わってから、勉強モードへの切り替えができない
  • ・なんとなくぼーっとして集中力が出ない

Aが多かったかた…対処法の【環境編】をチェック!
Bが多かったかた…対処法の【勉強の仕方編】をチェック!
Cが多かったかた…対処法の【切り替え方編】をチェック!

家で勉強できないときの対処法と工夫【環境編】

家で勉強に集中しやすくするためには、環境、勉強の仕方、切り替え方の3つの側面からの工夫が必要になります。まずは、環境面の工夫についてご紹介します。

誘惑になるものを片付ける

勉強の妨げになるものが多いと感じたかたは、勉強中の視界に入ることのないように片付けるようにしましょう。スマホやゲーム、漫画、タブレットなどが勉強スペースから目に入るのであれば、部屋の中の目の届かない場所に移動させたり、別の部屋に置いたりするようにしましょう。気が散りやすい傾向が昔からある場合は気を付けましょう。

また、スマホは勉強中は通知音を切っておくのもおすすめです。たとえ別の部屋にスマホを置いていたとしても、着信音や通知音が耳に入ると「誰からのメッセージだろう?」などと気になって集中が妨げられてしまうためです。

耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使用する

生活音や話し声が気になる場合は、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使用するのもおすすめです。また、砂嵐のような音で周囲の音を特定しづらくすると言われているホワイトノイズをBGMにするのも良いでしょう。

家で勉強できないときの対処法と工夫【勉強の仕方編】

勉強の仕方や取り組み方に工夫をするのも効果的です。次の3つを心がけていきましょう。

休憩時間を先に決める

勉強はだらだらと続けていても効果が出づらいものです。時間を区切ったり、勉強の後の楽しみを作ったりすることで「限られた時間でがんばろう」という意欲もわいてきます。そのため、最初に休憩時間を決めてしまうのがおすすめです。「40分たったら5分休憩しよう」「このドリルが終わったら、おやつ休憩にしよう」と次の行動を具体的にイメージしておくといいでしょう。逆に休憩前やゲームを始める前に、終わったら始める勉強の仕方を映像でイメージしておくと、ゲームなどをやめる際の区切りが付きやすく、かつやる気にかかわる線条体が勉強に対して活性化しやすくなります。

学習教科・科目や範囲などの計画を立てる

その日の勉強の目標や、勉強計画を立てることも重要です。ただなんとなく机の前に座っているだけでは、気が散ったり、別のことを考えてしまったりすることが多いもの。計画を立て、やることが可視化されれば「今日はこれだけやりきるぞ」という意識も高まるでしょう。

また、やることをリストアップして終わるごとにチェックしたり、線を引いて消したりするのもおすすめです。終わった部分と残っている部分とが明確になり、達成感を覚えやすくなるはず。「あとこれだけだから、ラストスパートをかけるぞ」と勉強を始める前のやる気(線条体の活移動)も高まりやすくなります。

簡単なドリルから始める

集中力を継続するには、勉強の順番も大切です。いきなり難しい問題演習からはじめるのでは、最初から行き詰まってしまうでしょう。まずはウォーミングアップとして簡単なドリルや得意教科・科目からスタート。エンジンがかかったところで問題演習や苦手科目に取り組むと無理なく進めていけるはずです。

家で勉強できないときの対処法と工夫【切り替え方編】

勉強の集中力を持続させるには、適切な休憩も欠かせません。そもそも人間は何時間も集中力を持続させることはできないもの。お子さまの集中力の持続時間に合わせて、30〜1時間ごとに5分程度の休憩をとって、上手にリフレッシュしていくようにしましょう。次の4つの切り替え方がおすすめです。

場所を変える

家の中で勉強場所を変えてみるのも効果的です。自分の部屋で勉強をしていて行き詰まってきたら、リビングやダイニングテーブルに移動して勉強するのもいいですね。場所が変わると気分も一新され、集中しやすくなるはずです。暑さや寒さが厳しい時期でなければ、ベランダの椅子で暗記事項を確認するというのも、ほどよく緊張感がほぐれてはかどるでしょう。

軽く体を動かして気分転換する

勉強していると首や肩、腰回りの筋肉がかたまってきてしまうものです。そうすると、血流が悪くなり、頭も働きづらくなってしまいます。そのため、休憩時間には軽く体を動かして筋肉の緊張をほぐすのがおすすめです。

ストレッチをしたり、好きな音楽に合わせて踊ったり、家の周りを散歩したりするのもいいですね。また、眠気がある場合であれば、ざっとシャワーを浴びるのもおすすめです。シャワーを浴びながら、好きな曲を熱唱すれば気分もシャキッとするでしょう。

チョコレートやラムネでブドウ糖をとる

勉強をしていると、脳が疲れてきます。そのため、脳のエネルギー源となるブドウ糖をとることが大切。チョコレートやラムネなどブドウ糖の多く含まれるおやつで、ブドウ糖を補給して脳を活性化させましょう。おもしろいことに、おやつを口に含むだけでもドーパミンの分泌が増しやる気が高まります。

またチョコレートには、ブドウ糖以外にも眠気を覚ましてくれるカフェインも含まれているので、勉強中のおやつとしておすすめです。

勉強を始めるルーティンを決める

休憩から勉強に戻りづらいということもあるでしょう。そういう場合は、勉強を始めるルーティンを決めておくのがおすすめです。「お気に入りのコーヒーを飲んだら勉強スタート」「この曲を聞いたら、勉強開始」といった具合に、自分なりのルールを決めておきましょう。次にやる勉強を映像で思い浮かべると、やる気に関わる脳の線条体を刺激できます。それに従っていくうちに、無理なく休憩から勉強に切り替えていくことができるようになるはずです。

保護者のかたができるサポートは?

お子さまが勉強に集中できるように、保護者のかたもサポートしていけるといいですね。あからさまなサポートは逆にプレッシャーになってしまうかもしれないため、あくまでさりげなくサポートするのがポイントです。全国の保護者から寄せられたアンケートの声と合わせてご紹介します。(※1)

お子さまの勉強中はなるべく静かにする

・子供達が勉強中は、出来るだけ周りで静かにしている。(中1/高1・奈良県)

・勉強中はテレビを消してあげる。(小6・東京都)

お子さまが勉強している際は、なるべく静かにしているという保護者のかたの声がありました。テレビや音楽をつけていたとしても音を小さくしたり、イヤホンを使ったりしてもいいかもしれませんね。

勉強スペースの環境を整える

・机の上に必要なもの以外何も置かない(小4・山口県)

・手の届くところに辞書など必要なものがあるようにしている。(小1/小6/中2・三重県)

・椅子は姿勢が崩れず、足が地にしっかり着くようなものを使用する。(小2・島根県)

・温度調節をする(小3・兵庫県)

誘惑のもとになるものを視界に入れないようにしたり、必要なものにすぐ手が届くようにしたりと、勉強しやすい環境をお子さまと一緒に整えてみましょう。

また、お子さまの勉強机や椅子の高さが合っているか、エアコンの温度はちょうどいいか、日差しが強かったりしないか……など快適さの観点も忘れずに。特に机や椅子の高さや、座り方はお子さま自身では気づきづらいものです。「ちょっと背中がまるまってるから、椅子の高さを調整してみる?」など声をかけてあげましょう。

お子さまの楽しみをつくる

・10時と3時のおやつタイムを決めて、それまでの時間頑張って姉妹揃って、ダイニングテーブルで勉強していた。(小3/小6/中2・京都府)

勉強をがんばるために、楽しみをつくってあげるのも大きなエールとなります。休憩時間に何をするかの予定を立てるのもいいですし、お子さまの好きなおやつを準備してあげるのもいいですね。「今日は集中していてすごいね」といった言葉と共に、チョコレートを差し入れてみたり、「がんばっているから、勉強終わったあとにみんなでゲームしようか」など声をかけたりしてみてはいかがでしょうか。 自分のがんばりを見てくれているんだな、とうれしくなると同時に「もっとがんばろう」と思えるかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

家で勉強に集中しづらいのには理由があります。決して、やる気や意欲が低いだけというわけではありません。今回ご紹介した内容をもとに「うちの子が集中しづらい原因はどこにあるのかな?」と考え、適切なサポートをしてあげられるといいですね。

出典
※1 「勉強に集中できる環境づくり」、どんなことをしていますか?(ベネッセ教育情報サイト)
https://benesse.jp/qa/gakushu/20220808-5.html

プロフィール


篠原菊紀

公立諏訪東京理科大学教授。専門は応用健康科学、脳科学。「学習」「運動」「遊び」といった日常的な場面での脳活動を研究。テレビをはじめメディアでの解説、脳トレ提案や、教育・学習に関する発信も多い。『子どもが勉強好きになる子育て』(フォレスト出版)ほか著書多数。

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