「授業はいつも筋書きのないドラマ」 数学授業の達人の、教え過ぎない授業
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NHK Eテレ「Rの法則」や「社会のトビラ」を担当する、NHK制作局チーフ・プロデューサーの桑山裕明氏。毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見る中で、「こんな先生に教えてほしい」と思うことがあるという。今回は、高校2年生の数学の授業を行う大阪府のAB先生をご紹介いただいた。
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「暮らしの中で役立つ数学」がモットーのAB先生の証明問題の授業。先生は、「まず、幼稚園児になれ!」と言い、「秋の遠足でイモ掘りに行って、大きなイモを掘りあてたとする。そして周りを見渡し、君だったら何と言う?」と生徒を指名しました。
生徒:俺のが大きい。
先生:そうやな! でもな……後ろで掘っとったやつが……「何を言う、俺のが大きい」と言った。どないする?
この2人の勝負をどうすればいいのか? 生徒たちは、いろいろなアイデアを出します。
生徒1:ほかの人に見てもらう。
先生:でも、20人に聞いて10対10だったらどうする?
生徒2:重さを測る。
先生:「俺は、体積のことを言っているんや」という反論が出たらどうする?
生徒たちは、無言に……。ここで、先生は「証明とは、生きていると必ず出てくる自分や他人の主張や発見を相手に納得してもらうためのもの。つまり、どうすれば相手が納得させられるかを学ぶためのトレーニングということ。だから、知っておくと役に立つ」と伝えたのです。さらに、「どんな手を使ってもいい。ただ、誰にでもわかりやすく説明できないといけない」と付け加えました。
この授業でAB先生が工夫したのは、「教師の教えすぎを排除する」ことでした。生徒が発見したことに対して常に驚きの表情を見せ、「本当か? いつでもそうなるか?」と一言添えるようにしたこと。それだけだと言います。そして、「手応えは、どうでしたか?」という質問に対する答えは……。
「やはり生徒はすばらしい。待てば必ず何かを見つけてくれる。授業はいつも筋書きのないドラマで、スリリングやな……」
こんな授業だったら、数学を苦手という子どもたちも好きになるのではないかと思いました。
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