病院に「行く」「行かない」の境目 ~発熱、下痢・嘔吐の場合~

お子さまが熱を出したり下痢になったりして急に体調を崩したとき、「病院に行くべきか」「行かないで様子を見るべきか」、迷うことは多いですよね。小児科医の本村智子先生に病院受診の目安とホームケアの方法を教えていただきました。



【熱が出たとき】
体温だけでなくお子さまの様子をよく観察しましょう

病院受診の目安
子どもの平熱はそれぞれ違いますので、何度になったら病院に行くべきというきっちりとした目安はありません。体温だけでなく、お子さまの機嫌と食欲を注意して見てほしいと思います。38℃以上あっても、食事がしっかりとれていて機嫌が良ければ、焦って救急病院に行く必要はないと思います。

一方、熱がそれほど高くなくても、ぐったりしていて食事がとれない、あるいはいつもよりひどく機嫌が悪い場合は、一度病院を受診したほうが良いでしょう。また、生後3か月未満で熱が出た場合やインフルエンザが流行している時期に高熱が出た場合、元気であっても熱が5日以上続く場合も病院を受診してください。


ホームケアのポイント
●寒気がないかぎり、熱があるときは布団をかけすぎたり、服を着せすぎたりするのは避けましょう。かけすぎ、着すぎは熱がこもってしまい、熱が下がりません。

●太い血管の通っている首筋、足の付け根、わきを、氷枕や氷のう、タオルでくるんだ保冷剤などで冷やしてあげましょう。市販の冷却ジェルシートで頭を冷やすのは、お子さまが気持ち良さそうにしているなら良いですが、嫌がるようならば止めましょう。

●入浴は体力を消耗してしまいます。熱が38℃以上あるときは、お風呂はお休みして、体をふいてあげましょう。何日もお風呂に入れないときは、シャワーにしましょう。

●解熱剤は、お子さまが元気にしていて食欲もあるなら必要ありません。38.5℃以上の熱があり、水分が取れない、機嫌が非常に悪いときは、解熱剤を使ってもよいでしょう。ただ、解熱剤の中には、ライ症候群という病気をひきおこす危険性のある解熱鎮痛剤(アスピリン、ボルタレン等)がありますので、病院で処方される安全性の高いアセトアミノフェン系の解熱剤(カロナールやアンヒバ等)を使うほうが安心です。


【嘔吐・下痢をしたとき】
脱水に注意! 半日おしっこが出ていないときは時間外でも受診を

病院受診の目安
嘔吐や下痢などの症状があるお腹の風邪は、ウイルス性の胃腸炎と細菌性の胃腸炎に分かれます。特に乳幼児に多いのは、ロタウイルスやノロウイルスのウイルス性の胃腸炎。激しい下痢や嘔吐などの症状が見られ、脱水症状を起こしやすい病気です。脱水は熱以上に怖く、重症の場合は入院が必要になることも。まれに脳などに影響を及ぼし命に関わることもあります。目が落ちくぼんでいる、唇が乾いている、ぐったりとして動けないなどイラストのような症状や10時間以上おしっこが出ていなかったら、すでに重症化している可能性があります。夜間でも救急病院を受診してください。


ホームケアには経口補水液を
嘔吐、下痢により失われた水分と塩分を補うため、経口補水液を少しずつ飲ませましょう。たくさん飲ませようとすると吐いてしまいますので、10ml~20mlといった少量で良いので、頻繁に飲ませるのがポイントです。経口補水液は薬局やドラッグストアでも販売されていますが、家庭にある材料ですぐに作ることもできますので、参考にしてください。


プロフィール


本村智子

本村医院院長。長崎大学医学部卒業後に同大学病院に勤務後、アメリカとウクライナで勤務し、帰国。その後6年にわたり川崎市保健福祉センターで乳児健診や育児相談などに関わり、平成17年本村医院を開業。

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