「歩かない子ども」が増加!? 二極化する行動様式

「老化は足から始まる」と言われているように、歩くことは健康な生活の基本です。ところが子どもたちの間で、活発に歩く者とあまり歩かない者に二極化していることが、東京都教育委員会の調査でわかりました。文部科学省などの調査でも学力や体力が二極化しつつあることが判明していますが、「歩く」という日常生活の面でも子どもたちに二極化現象が起こっているようです。

調査は、2011(平成23)年9月から10月にかけて、都内の小学校から高校までの公立学校の子どもたち1万6,100人に歩数計を配布し、2週間の歩数を記録するという方法で実施しました。これだけの人数を対象にした歩数調査は全国でも初めてということです。

調査結果によると、1日の平均歩数は小学生が1万1,382歩、中学生が9,060歩、高校生が8,226歩で、全体では平均1万445歩となっています。厚生労働省の調査によると成人の平均歩数は男性が約7,200歩、女性が約6,400歩なので、都教委は「高校生は、既に成人の生活・行動様式に近付いている」と説明しています。しかし、より興味深いのは、歩数の多い活動的な子どもたちと、歩数が少なく活動的でない子どもたちの「二極化傾向がある」と分析されていることです。

文科省の全国体力・運動能力、運動習慣等調査(全国体力テスト)では、運動する子どもたちと、ほとんど運動しない子どもたちに二極化する傾向があることが明らかになっています。今回の都教委の調査でも、歩数の多い小・中学生は運動能力が高い傾向にあるとされていますので、歩数の二極化は運動能力の二極化と重なります。しかし、このような二極化の問題点は、単に活発な子どもとそうでない子どもに分かれる、という簡単な問題ではありません。いずれの調査結果の分析でも指摘されているのは、一部の高成績グループがある一方で、全体的に運動しない層、歩かない層の子どもたちの増加が、統計上は二極化となって表れているということです。

都教委の調査によると、学校以外の休日や放課後の過ごし方によって歩数の違いが出てくるようです。歩くという行為は体力だけでなく、健康な日常生活を送るためにも欠かせないものです。子どもたちの歩数の減少は、ゲーム機の普及、学習塾通いの増加などさまざまな要因が考えられますが、子どもたちの将来のためにも、子どもたちが安心して外で遊んだり運動したりできるよう、保護者だけでなく社会全体で配慮する必要があるのではないでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A