学びをダウンロードして、自分の言葉で話す。相川七瀬が考える、学ぶ意味
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「学ぶ意味」をお子さまから聞かれた時、どう答えていますか? 役に立つため、将来のため……。返答はいくつも浮かぶものの、どれも少ししっくりこない。そんな疑問を、大人になった今も学び続けている方々に投げかけてみました。
今回お話を聞いたのは、今年でデビュー30周年を迎えたアーティストの相川七瀬さん。相川さんは、3人の子どもの子育てと歌手活動のかたわら、高卒認定試験を経て、45歳で國學院大学に入学。昨年4月からは同大学の大学院生として、民俗学の研究にいそしんでいます。今なお学び続けている相川さんに、学ぶ意味とは何なのか、そして子育ての中での試行錯誤を聞きました。
学びに終わりはない。人生が続く限り、学びも続く
——ズバリお伺いしますが、相川さんにとって「学ぶ意味」とは何でしょうか?
そうだなあ。「学び」って終わりがないですよね。いくつになっても続いていくというか。人生は学びの連続だから、「学ぶことは、生きること」「生きることは、学ぶこと」といえるかもしれません。
——「学ぶことは、生きること」、かなり壮大なお話ですね。
「学び」と聞くと、机に向かって国語・算数・理科・社会といった教科を勉強することを想像しませんか? でもそれは、「学び」の入り口でしかないと私は思っていて。
——「学び」の入り口でしかない?
大人になっても学ぶことばかりじゃないですか。たとえば仕事なら、仕事内容を覚えること、書類を管理すること、プレゼンテーションの方法を知ること……。コミュニケーションなどの人間関係も学びですよね。
大学院では民俗学を専攻し、合宿にも参加
(相川七瀬さんInstagramより)
——言われてみると、机に向かいはしないものの、どれも学びといえるかもしれません。
仕事に限らず、プライベートだってそうです。結婚、子育てといったライフステージの変化は学ぶことが多いですし、たとえば病気を患ったとしたら、病気のことや治療法について学ぶ可能性がありますよね。
以前長男から「大人になっても勉強するって大変だね」と言われたことがあるのですが、本当にそうなんですよ。どんな分野や状況であれ、新しいことのインプットは常に学び。生きるって学びの連続だと思います。
手探りの中でつかんだ。算数嫌いの次男で気付いたインプットの違い
対馬の伝統行事「赤米神事」への興味が
学び直しのきっかけに。
写真は赤米の田植えに参加する相川さん
(相川七瀬さんInstagramより)
——お子さまたちの学びを、母親としてこれまでどのようにサポートされていたのですか?
一緒に体感・体験することを大切にしていました。京都の文化遺産や縄文遺跡など歴史的建造物は観光がてら一緒に見に行きましたし、長男と次男は理科が苦手だったので面白い実験動画を夜な夜な探しては「これ見てよ!」と一緒に楽しんだこともありました。
——相川さんも、一緒に行ったり見たりしていた。
はい。教科書を見てもただの漢字や文字の羅列では興味がわきませんよね。もちろん一緒に体験したからといって本人に興味がわくとは限りませんが、実際に行ったことがある・見たことがある、五感を使ってリアルに体感することが大事だと思っていました。
——理科や社会などはイメージがわきますが、算数などの教科で体感というのは難しくないですか?
そうですよね。うち、次男がとにかく算数が苦手だったんです。学んでもらえるようにいろいろ模索したのですが、どれもしっくりこない。どうしようと悩み、最終的にたどり着いたのは「そろばん」でした。
そろばんは、パチパチと体を使って数を数えますよね。そうやって体を使うことが次男には合っていたようで、徐々に算数ができるようになった時は安心しました。
——なるほど。身体的に数に触れてもらったんですね。
子育てをとおして私は、子どもにはそれぞれ得意なインプット方法があるということを学びました。次男は体を使ったほうが定着し、一方で長女は耳から聞くほうが定着する。みんな同じじゃないというのは大きな気付きでしたね。
——お子さまの様子を観察されて、いろいろ試したからこその気付きですね。
「学び」が自分を支える道具になる。学びの真価とは
「学び」はインプットして定着したあと、その先でアウトプットすることが大切だと私は考えています。
——アウトプット、ですか。
もしかするとこれは、私の仕事柄そう思うのかな。私の仕事は、自分の中にある言葉を歌詞にして人前で歌うこと。だから、アウトプットすることにこだわっているのかもしれません。
学びはインプットして終わりではなく、自分の言葉にできることがポイントです。自分の言葉で出すには、自分自身が納得して腹落ちしていないと言語化できないと思うので。
——アウトプットをとおして、学びが「自分のもの」になるんですね。
自分が納得して出した言葉には説得力があるから、相手にも伝わります。逆にいうと、自分の中で咀嚼(そしゃく)しきれていなければ、相手には伝わらない。私は、学びが自分にダウンロードされ、アウトプットできることでようやく自分を助ける道具となり、それが生きる術(すべ)になっています。
——学びが自分を助ける道具になる、素敵です。
私は今、大学院で民俗学を研究していますが、学んでも学んでも世の中知らないことだらけ。そんななかで、知らないことを知れた喜びって、すごく大きくて。「学び」は、人生を楽しくさせてくれる栄養素にもなりますよね。
<文・田邉 なつほ 写真:テラケイコ(2024年撮影)+ご本人提供(Instagramより) >
◆相川七瀬が考える、学ぶ意味
「人生は学びの連続。学ぶことは、生きることにつながるから」
- 一般教科の勉強は学びの入り口。大人になっても学びは続く
- インプット方法は、一人ひとりに個性と適性がある
- インプットした「学び」は、アウトプットすることで自分のものに
- 自分で納得し腑(ふ)に落ちていることで、学びが人生を助ける道具になる
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